働きがいを応援するメディア

2026.2.26

【人事必見!】リスキリングとは?補助金で始める人材育成完全ガイド 


リスキリング(Reskilling)とは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、従業員が新しいスキルを習得することです。 現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、既存の業務がAIや自動化に置き換わる中で、企業には「人材の再教育」が求められています。導入にあたっては、「人材開発支援助成金」などの公的制度を活用することで、研修費用の最大75%が助成されるケースもあります。

本記事では、リスキリングの基礎知識から、主要な補助金の一覧、失敗しない導入手順までを徹底解説します。 

リスキリングとは?人事担当者が押さえるべき定義と背景

リスキリングの定義 

リスキリングは、単なる「従業員研修」とは一線を画します。経済産業省の定義によれば、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること」と示されています。

これは単なるスキルの継ぎ足しではなく、職種転換や業務プロセスの抜本的な作り直しを前提としています。ポイントは、個人の趣味や教養のためではなく、「企業の持続的成長のために、業務で必要なスキルを身につけさせる」というビジネス戦略的な側面が強い点にあります。人事担当者は、単なる「教育」ではなく「投資」としての側面を理解し、経営目標に直結したプログラムを設計する必要があります。 

なぜ今、リスキリングが不可欠なのか? 

背景には、第4次産業革命とも呼ばれるデジタル技術の進化があります。特に生成AIの急速な普及により、従来の事務作業やデータ処理のあり方が根本から覆されています。 

スキルの短命化 
従来通用していたITスキルや事務スキルが、AIの登場により数年で陳腐化するようになりました。これにより、常に学び続けなければ業務を維持できない状況が生まれています。 

労働力不足の深刻化 
外部からDX人材を採用するのは極めて困難であり、人材の争奪戦が起きています。そのため、社内の業務に精通した既存人材をアップデートする方が、定着率も高く現実的かつ効率的とされています。 

リカレント教育との決定的な違い  

「学び直し」という点では共通していますが、その性質は大きく異なります。両者の違いを一覧表で整理しました。 

比較項目 リスキリング リカレント教育 
主導権(誰が) 企業(会社が推進する) 個人(自分の意志で動く) 
目的(何のために) 業務への適応・付加価値向上 生涯学習・自己実現 
タイミング 働きながら(業務時間内・並行) 仕事を離れてから(休職・退職して学ぶ) 
費用負担 主に企業(補助金・助成金活用) 主に個人(自己投資) 

学ぶきっかけ 

リカレント教育は、個人が「自分の市場価値を高めたい」「新しい学問を修めたい」という自発的な意志で、教育機関などに戻って学びます。一方、リスキリングは企業が「この事業を存続させるために、従業員にこのスキルを持ってほしい」という経営戦略上の必要性に基づいて主導します。 

学習と仕事の関係性 

リカレント教育は、一度職場を離れてから勉強するのが特徴です。対して、リスキリングは今の職場で、今の仕事をアップデートするために行います。そのため、「仕事を続けながら、新しいスキルを即座に実務へ反映させる」という即効性が強く求められます。 

学習にかかる費用について 

個人の趣味嗜好に近い学びであれば「リカレント教育」として本人が負担すべきですが、業務に直結する「リスキリング」であれば、会社が研修費用を負担し、さらには助成金を活用してでも推進するべき「業務の一環」となります。 

企業がリスキリングを導入する3つの具体的メリット 

リスキリングは、単なるスキルの習得にとどまらず、企業に多くのメリットをもたらします。 

  1. 業務の自動化・効率化による生産性向上
  2. 組織の変革(DX)を内部から推進できる
  3. 採用・教育コストのトータル削減 

業務の自動化・効率化による生産性向上 

例えば、経理部門がRPA(業務自動化ツール)の構築スキルを習得すれば、月次決算の作業時間を大幅に削減できます。また、手作業で行っていたデータ入力や照合作業をAIに任せることで、人間はより付加価値の高い分析業務や戦略立案に時間を割くことが可能になります。これは単なる時短ではなく、組織全体の知的生産性を底上げすることを意味します。 

組織の変革(DX)を内部から推進できる 

外部のコンサルタントに頼り切るDXは、現場の抵抗に遭いやすく、契約終了とともに形骸化するリスクがあります。しかし、自社の業務を熟知している現場社員がITスキルを持つことで、現場の課題感に即した実効性の高いDXが実現します。社内事情に詳しい「現場×デジタル」のハイブリッド人材こそが、変革の最大の原動力となります。 

採用・教育コストのトータル削減 

専門人材を一人採用するには、数百万円の紹介手数料に加え、オンボーディングにかかる膨大な時間が必要です。また、社風に合わず早期離職するリスクも無視できません。助成金を活用して社内人材を育成すれば、コストを大幅に抑えつつ、企業文化や顧客特性を深く理解した「即戦力」を安定的に確保することができます。 

リスキリング導入における3つの注意点 

メリットが多いリスキリングですが、導入時には必ずといっていいほど「現場の壁」に突き当たります。事前にこれらの注意点を把握し、対策を講じることが重要です。 

従業員の「学習時間」の確保と業務負担 

リスキリング最大の失敗要因は、「通常業務に加えて勉強しろ」と現場に丸投げすることです。残業が増えるだけでは学習意欲は低下し、逆効果になりかねません。業務時間の一部を「学習時間」として公式に認定する、あるいは一時的に業務量を調整するなど、会社側が学習を「仕事」として認める制度設計が不可欠です。 

学習モチベーションの維持 

大人になってからの学び直しは精神的な負荷が高く、「なぜ今さらITを学ばなければならないのか」と反発する層も現れます。これを防ぐには、スキル習得が本人のキャリアにどうプラスになるか(市場価値の向上や昇給への連動など)を明確に示す必要があります。単なる押し付けではなく、従業員が「自分にとって得だ」と感じる動機付けが必要です。 

学びと実務のミスマッチ 

「流行りのPython(プログラミング)を学ばせたが、実務で使う場面が一切なかった」というケースは多々あります。学習内容が実際の業務改善にどう結びつくかを事前に定義しておかなければ、学習はただのイベントで終わってしまいます。アウトプットの場(プロジェクト)を同時に設計することが、投資対効果を最大化する鍵となります。 

失敗しない!企業のリスキリング導入の5ステップ 

リスキリング導入を失敗しないためには、以下のステップを心がけましょう。 

  • STEP1 スキルギャップの特定
  • STEP2 対象者とカリキュラムの選定
  • STEP3 補助金・助成金の申請準備
  • STEP4 学習環境の整備と実施
  • STEP5 効果測定と業務への適用 

STEP1 スキルギャップの特定 

現在の従業員のスキルマップと、3〜5年後の経営戦略に必要なスキルの「差(ギャップ)」を可視化します。「どの部署の、誰が、何のスキルを持てば目標を達成できるか」を具体的に定義するこの工程が、プロジェクトの成否を大きく左右するといえるでしょう。 

STEP2 対象者とカリキュラムの選定 

全員に同じ教育をするのではなく、適性や現在の業務内容、本人の意欲に合わせて、ターゲットを絞ったプログラムを作成します。初学者向けのオンライン学習から、エキスパートによるハンズオン研修まで、段階的なカリキュラムを用意することで脱落者を減らすことができます。 

STEP3 補助金・助成金の申請準備 

利用する制度を選定し、研修ベンダーから詳細な見積もりを取り、労働局や自治体へ「計画届」を提出します。補助金の要件(訓練時間数や講師の資格など)は非常に細かいため、ベンダー側が助成金対応の書類作成をサポートしてくれるかどうかも選定基準に加えるべきです。 

STEP4 学習環境の整備と実施 

業務時間内に学習時間を確保することが成功のポイントです。週に数時間の「リスキリング・タイム」を設ける、あるいは全社的な会議を減らして学習に充てるなどの措置を講じます。また、Slackなどのチャットツールを活用し、受講生同士が教え合えるコミュニティを作ると継続率が高まります。 

STEP5 効果測定と業務への適用 

研修終了後、試験の合格やスキルの習得状況を確認するだけでなく、実際にそのスキルを活かせる部署へ異動させたり、新しいプロジェクトを任せたりして「実践」の場を提供します。学びが成果(売上向上やコスト削減)に繋がったことを社内に公開することで、リスキリングの文化を定着させます。 

リスキリングを成功させる3つの重要ポイント 

補助金という「予算」を確保できても、運用がうまくいかなければ「無駄」になってしまいます。成功企業が共通して行っている工夫をご紹介します。 

  1. 経営層を巻き込み、全社的な「公認プロジェクト」にする
  2. キャリアパス・評価制度とセットで設計する
  3. 「学びっぱなし」にさせない実践コミュニティの形成 

① 経営層を巻き込み、全社的な「公認プロジェクト」にする 

リスキリングは人事部だけの施策ではなく、経営戦略そのものです。社長や役員が「なぜこの学びが会社の未来に必要なのか」を直接発信することで、現場の管理職も「部下に学習時間を割かせること」に協力的になります。トップダウンのメッセージが、現場の心理的ハードルを下げます。 

② キャリアパス・評価制度とセットで設計する 

「学んだら給与が上がる」「希望のプロジェクトにアサインされる」といった明確なメリット(インセンティブ)が必要です。スキルマップを更新し、習得したスキルを評価項目に組み込むことで、従業員は「自分の市場価値を高めるチャンス」として前向きに取り組むようになります。 

③ 「学びっぱなし」にさせない実践コミュニティの形成 

一人でオンライン講座を受けるだけでは挫折しがちです。同じ講座を受ける社員同士でチャットグループを作ったり、定期的にアウトプット発表会を行ったりすることで、相互学習(ピア・ラーニング)の環境を整えます。社内に「教え合う文化」ができることが、最大の成功と言えます。

また、リスキリングを一過性の研修で終わらせないためには、「誰が・どのスキルを・どのレベルまで習得したか」を継続的に可視化し、配置・評価・育成計画に反映できる仕組みが重要です。

近年では、従業員のスキルデータを一元管理できるタレントマネジメントシステムを活用し、育成施策を戦略的に運用する企業も増えています。 

【一覧比較】リスキリングで活用できる企業向け補助金・助成金 

リスキリングの推進に伴い、国からの補助金・助成金を受け取ることができます。
人事担当者がまず検討すべき、主要な支援制度を比較表にまとめました。
※各制度の助成率・上限額・要件は年度や公募時期によって変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。 

制度名 主な管轄 助成率・補助額 特徴 
人材開発支援助成金
(事業展開等リスキリング支援コース) 
厚生労働省 最大75%
(1人最大20〜50万円) 
職務に関連した専門的な訓練に
幅広く適用できる。
賃金助成もあり。 
DXリスキリング助成金
(東京都) 
東京しごと財団 最大3/4
(上限100万円/社・年度) 
都内中小企業限定。
eラーニングなども対象になりやすく、
非常に使い勝手が良い。 
デジタル化・AI導入補助金 経済産業省 1/2〜4/5
(上限450万円) 
ITツールの導入とセットで、
その活用教育費や
コンサルティング費を補填できる。 
ものづくり・商業・
サービス生産性向上促進補助金 
中小企業庁 小規模 2/3 
中小企業 1/2
 
(最大2,500万円) 
設備投資とセット。
新事業展開に伴う高度な
技術習得を支援。 

(参考資料) 
・厚生労働省 – 令和7年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和7年4月1日版) 
・東京しごと財団 – 令和7年度DXリスキリング助成金 
・経済産業省 – デジタル化・AI導入補助金 
・中小企業庁 – はじめてのもの補助 

助成金活用の注意点 

助成金は「後払い」です。まず企業が費用を全額負担し、研修後に報告を行うことで数ヶ月後に支給されるため、キャッシュフローに注意が必要です。また、「研修開始前に計画届を提出し、承認を得る」ことが絶対条件であるため、1〜2ヶ月先を見越した前倒しのスケジュール管理が求められます。書類不備で受給できないケースを避けるため、チェックリストの活用を推奨します。 

「リスキリング」に関するよくあるQ&A    

Q1:リスキリングは全社員に行う必要がありますか 

A: 必ずしも全員である必要はありません。まずはIT部門や企画部門、あるいは現場のDXリーダー候補など、変化の影響を強く受ける部署からスモールスタートし、成功事例を作ってから他部署へ拡大することをお勧めします。特定部署での成功体験(「こんなに楽になった!」)が、全社的な波及効果を生みます。 

Q2:研修中に退職されてしまうリスクが心配です 

A: 研修費用を会社が負担する代わりに、修了後一定期間の勤務を条件とする契約(返還合意)を検討する企業もあります。ただし、労働基準法などの法的制約があり、内容によっては違約金とみなされ無効となる可能性もあるため、制度設計にあたっては専門家への相談が必要です。むしろ、「この会社にいれば成長できる」というポジティブな魅力で引き留めるエンゲージメント施策として捉えることが、長期的には有効といえるでしょう。 

Q3:補助金の申請は自社でできますか 

A: 可能です。各窓口で丁寧に教えてくれます。ただし、書類が複雑で不備が出やすいため、確実に受給したい場合や事務負担を軽減したい場合は、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けることで、採択率を高めることができます。 

Q4:どのようなスキルを学ばせるのが一般的ですか 

A: データ分析(PythonやExcel Power Query活用)、AI・プロンプトエンジニアリング、デジタルマーケティング、ノーコードツールによる業務効率化などが主流です。最近では、ITそのものだけでなく「DXマインドセット(変革の考え方)」や「アジャイルな思考法」を基礎教育に組み込む企業も増えています。 

リスキリングは企業の未来を創る「戦略的投資」 

本記事では、リスキリングの基本から補助金の活用、成功のステップについて解説してきました。最後に、人事担当者が押さえておくべき4つの重要ポイントをおさらいします。

リスキリングの本質
単なる学び直しではなく、企業の生存戦略として「新しい業務に必要なスキル」を習得させる投資である。

コスト対策が鍵 
「人材開発支援助成金」などを活用すれば、経費の最大75%が助成されるため、財務リスクを最小限に抑えられる。 

現場への配慮 
「学習時間の確保」と「モチベーション設計」をセットで行うことが、挫折を防ぐ最大のポイント。 

実践の場を作る 
学んで終わりにせず、すぐに実務やプロジェクトでアウトプットする環境を企業が用意する。

変化の激しい時代において、従業員のスキルを常にアップデートし続けることは、最も確実なリスクヘッジであり、成長戦略となります。しかし、ここで重要なのは研修を実施すること自体ではなく、「誰が・どのスキルを・どのレベルまで習得しているか」を継続的に把握し、それを適材適所の配置や正当な評価、次なる育成計画へと着実に活かせる仕組みを構築することです。

学びを個人の経験で終わらせず、組織全体の資産として循環させてこそ、リスキリングは真の価値を発揮します。補助金や助成金の申請には綿密な事前準備が必要ですが、その一歩を踏み出す決断が、数年後の組織力に大きな差をつけます。

まずは、自社の経営戦略に基づいた「必要なスキル」の棚卸しと、その育成を仕組み化するための体制づくりから始めてみてはいかがでしょうか。 

戦略的なタレントマネジメント運用なら
「COMPANY Talent Management」シリーズ

「COMPANY Talent Management」シリーズは、日本企業の高度で複雑な人事制度に最適化され、人的資本マネジメントを統合的にサポートするタレントマネジメントシステムです。組織ごとに異なる人事課題にスピーディに対応できる豊富な機能を備えており、組織力を強化するための分析や、育成のためのプラン作成等、多岐に渡る人材マネジメント運用がこのシステム一つで実現できます。

「3分でわかる!サービス・プランガイド」をいますぐ無料ダウンロード

Category

ビジネス用語全般

Keyword

Keywordキーワード