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2026.5.29

SECIモデルで属人化を解消!組織を強くするナレッジマネジメントの実践法 

SECI(セキ)モデルとは、個人の頭の中にある「暗黙知(経験や勘)」を、組織の資産である「形式知(図解や共有データ)」へと変換し、循環させることで組織を強くする経営理論です。

「ベテラン社員が退職したら、この業務はどうなるのか……」  
「現場のノウハウがブラックボックス化していて、若手が育たない」 

多くの組織開発担当者やマネジャーが抱える「属人化」という悩み。特に、長年の経験による「暗黙知」が多い製造業や専門職において、知識の継承は企業の存続を左右する最重要課題です。

この課題を解決する強力なフレームワークが、日本発祥の経営理論である「SECI(セキ)モデル」です。本記事では、SECIモデルの基本から、業務の属人化を解消し組織の力を最大化するための具体的な実践ステップまでを徹底解説します。 

なぜ今、SECIモデルが「属人化」解消の鍵となるのか? 

現代のビジネス環境において、属人化の解消が急務となっている理由は、単なる業務効率化だけではありません。背景には以下の3つの危機や変化があります。

①労働力不足と技術継承の危機 

ベテラン層の定年退職が加速する中、彼らが持つ「職人芸」を組織に残せなければ、企業の競争力は一気に失われます。 

②働き方の多様化 

テレワークの普及により、かつての「背中を見て盗む」といった自然な知識伝達が困難になっています。 

③DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤 

AIやITツールを導入しても、共有すべき「中身(ナレッジ)」が整理されていなければ、宝の持ち腐れとなります。

SECIモデルは、個人の頭の中にある主観的な知識を、組織全体の客観的な資産へと変換するプロセスを体系化しています。これこそが、場当たり的なマニュアル整備ではない「本質的な属人化解消」の鍵となるのです。 

SECIモデルとは? 

SECI(セキ)モデルとは、個人の持つ「暗黙知」を組織の「形式知」へと変換し、新しい知識を創造し続けるためのフレームワークです。このモデルは、ナレッジマネジメントの世界的権威である野中郁次郎氏らが提唱し、以下の4つのプロセスの頭文字を取って「SECI」と呼んでいます。 

S:共同化(Socialization)…暗黙知を暗黙知のまま伝える 
E:表出化(Externalization)…暗黙知を形式知に変える 
C:連結化(Combination)…形式知と形式知を組み合わせる 
I:内面化(Internalization)…形式知を自らの暗黙知として習得する 

「暗黙知」と「形式知」とは 

SECIモデルを理解する上で欠かせないのが、「暗黙知」と「形式知」という2つの概念です。 

暗黙知 

「暗黙知」は、主観的かつ、言葉にするのが難しく、経験に基づいた知識のことです。 

  • 特徴: 個人の経験、直感、熟練したスキル、思考の癖などに紐付いています。「なんとなく分かる」「体で覚えている」といった感覚的なもので、他人に伝えるには一緒に作業をするなどの「体験の共有」が必要です。 
  • ビジネスの例: ベテラン営業マンの「このお客さんは、今これを言えば決まる」という勘やベテランの「音を聞けば機械の不調がわかる」という感覚を意味する。 

形式知 

形式知は、「文章、図解、数値などで、客観的に表現された知識」のことです。 

  • 特徴: 言葉や記号で定義されているため、誰でも読み取ることができ、デジタルデータとして保存したり、大勢に一斉に共有したりすることが可能です。 
  • ビジネスの例: 業務マニュアル、契約書、売上データ、仕様書。 
項目 暗黙知(Tacit) 形式知(Explicit) 
表現方法 言葉にしにくい(主観的)言葉や図で示せる(客観的) 
共有のしやすさ 難しい(時間と体験が必要)容易(配布や検索が可能) 
具体例 勘、コツ、価値観、ノウハウマニュアル、データ、数式 
保存方法 「人」の中に宿る「媒体(紙・データ)」に残る 

知識を組織の力に変える4つのプロセス【図解】 

SECIモデルでは、以下の4つのステップを螺旋状に繰り返すことで、知識を増幅させていきます。 

【共同化】Socialization 

言葉ではなく、同じ場所で同じ体験を共有することで、感覚的なノウハウを伝達する段階です
具体例:師弟同行、OJT、雑談、現場での共同作業 

【表出化】Externalization 

個人の頭の中にあるコツを、比喩や図解、言葉を使って外に書き出す段階です
具体例:成功事例の言語化、業務マニュアルの作成、トラブル対応記録 

【連結化】Combination 

バラバラに書き出された情報を組み合わせ、より大きな知識体系にまとめる段階です
具体例:マニュアルの統合、社内wikiの整備、データの分析・レポート化 

【内面化】Internalization 

体系化された知識を読み込み、実践することで、自分の知識(新たな暗黙知)とする段階です
具体例:マニュアルを基にしたシミュレーション、研修後の実務実践、自己啓発 

SECIモデルの実施に必要な4つの場とは? 

野中教授は、SECIプロセスを円滑に回すために、その基盤となる「場」が必要であると述べています。

プロセス 対応する「場」 特徴 具体例 
共同化 創発場
(そうはつじょう) 
他者と知識の
交換を行う場
ランチ会や飲み会、
気軽なチャットルーム 
表出化 対話場
(たいわじょう) 
通常業務の中で
行われる対話の場
1on1、業務マニュアルや資料作成 
連結化 システム場 情報を集積する場ナレッジベース、社内wiki、
各種データの統合・分析レポート 
内面化 実践場
(じっせんじょう) 
従業員一人ひとりが
形式知を繰り返し実践する場
業務を行う作業スペース 

SECIモデルを導入する3つの大きなメリット 

SECIモデルを導入することで、主に以下の3つのメリットが挙げられます。 

①属人化を解消し、組織の持続性を高める
②人材育成の効率化と標準化を実現する
③新たなイノベーションを生み出す土台になる 

メリット1:属人化を解消し、組織の持続性を高める 

特定のベテランに頼り切りの状態から脱却し、誰が担当しても一定のクオリティを維持できる体制が整います。これは事業継続計画(BCP)の観点からも極めて重要です。 

メリット2:人材育成の効率化と標準化を実現する 

「背中を見て育て」という時間のかかる育成から、体系化された知識を活用した「効率的な自学自習」が可能になります。新入社員の早期戦力化に直結します。 

メリット3:新たなイノベーションを生み出す土台になる 

個人の知識が混ざり合う(連結化)過程で、これまでにない新しいアイデアや解決策が生まれます。知識は共有されることで減るのではなく、むしろ増大していきます。 

属人化解消へ!SECIモデル実践の5ステップ 

SECIモデルを現場で実践するための具体的な導入手順を5つのステップで解説します。 

①目的の明確化とスモールスタート
②心理的安全性の確保と体制構築
③「場」の設計とツールの選定・導入
④プロセスの実行と活動の可視化
⑤継続的な改善と定着化 

Step1:目的の明確化とスモールスタート 

いきなり全社展開を目指すと、現場の負担が重すぎて失敗する可能性があります。そのため、「最も属人化が深刻な部署」や「継承が急がれる特定の技術」など、領域を絞ってパイロット運用を開始しましょう。 

Step2:心理的安全性の確保と体制構築 

どうしても「自分のノウハウを公開したら自分の価値(存在意義)が下がる」と考える従業員もいます。ナレッジの共有をポジティブに捉える文化づくりと、共有に貢献した人を評価する仕組みを設計します。 

Step3:「場」の設計とツールの選定・導入 

情報を蓄積するシステム(社内wikiや動画マニュアルツールなど)を導入します。システムを選定する際には「現場がいかに手軽に入力できるか」というポイントを大切にしましょう。 

Step4:プロセスの実行と活動の可視化 

定期的なワークショップを開催し、「書き出す(表出化)」時間を強制的に確保します。どれだけナレッジが溜まったかを数値で可視化し、活動の熱量を維持します。 

Step5:継続的な改善と定着化 

溜まった情報を定期的に見直し、古い情報を更新します(連結化)。現場から「このマニュアルのおかげで助かった」という成功体験(内面化)を吸い上げ、好循環を定着させます。 

「SECIモデル」に関するQ&A 

Q:SECIモデルとナレッジマネジメントの違いは何ですか?  

A:ナレッジマネジメントは経営手法全体を指し、SECIモデルはその中で「知識がどう作られ、共有されるか」を説明する具体的な思考フレームワーク(理論モデル)という関係です。 

Q:暗黙知を形式知化するのが難しい場合はどうすればいいですか?  

A:無理に文章化せず、動画での記録や、熟練者へのインタビュー動画・音声、または「たとえ話(メタファー)」を用いるのが効果的です。 

Q:忙しい現場に「書き出す」時間を取ってもらうには?  

A:業務時間を「作業」と「振り返り」に分け、振り返りも業務の一部として評価に組み込むことが重要です。また、音声入力ツールなど「書く手間」を省く工夫も有効です。 

Q:古いマニュアルが放置され、結局誰も見なくなってしまいます。対策はありますか?  

A:情報の鮮度を保つ「編集責任者」を任命してください。また、現場の疑問にAIが回答する仕組みを導入し、AIの回答が間違っていたら修正してもらうという「共同作業化(あるいは自動化)」も注目されています。 

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