2025.12.23
2025−2026年人事注目ワード解説 ワークエンゲージメント・人的資本経営・サクセッションプラン
こんにちは!働きがいを応援するメディア「ピポラボ」を運営するサイダス編集部です。
近年、企業の人材戦略は急速に変化しており、その流れは年々加速しています。本記事では、2025年から2026年にかけて注目される3つのキーワードを取り上げ、それぞれの特徴と、タレントマネジメントシステムの活用方法をご紹介します。

【ピポラボ 30秒で解説!|2026年にかけて人事が押さえたい3つのトレンドワード】
- ワークエンゲージメント
ワークエンゲージメントは、従業員のメンタル面での健康度を示す概念です。ワークエンゲージメントが高い状態とは、組織の心理的安全性が高く、結果として高いパフォーマンスが発揮されている状態だといえます。近年では、「活力」「熱意」「没頭」の3つの観点で状態を測定するエンゲージメントサーベイのニーズが高まっています。
- 人的資本経営
人的資本経営は、従業員をコスト(資源)ではなく、価値を生み出す「資本」として捉える経営手法です。2026年3月期から有価証券報告書における人的資本開示拡充(給与増減率など)が予定されています。
- サクセッションプラン
経営戦略に基づいた次世代リーダーを計画的に育成する取り組みです。対象となるポジションの特定、必要なスキルや経験の明確化、後継者候補の選定、育成計画の策定・実施という流れで進めていきます。候補者の育成進捗や組織・ポジションの変化に応じて、定期的に計画を見直し、最適化していきます。
ワークエンゲージメント

ワークエンゲージメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を示す概念で、以下の3つがそろった状態と定義されます。
- 活力:仕事から活力を得て、いきいきとしている状態
- 熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている状態
- 没頭:仕事に熱心に取り組んでいる状態
つまり、ワークエンゲージメントが高い人は、仕事に誇りとやりがいを感じて熱心に取り組み、いきいきとしている状態であるといえます。
従業員満足度との違い
ワークエンゲージメントと似た言葉に「従業員満足度」があります。従業員満足度は、仕事内容や給与・福利厚生、労働環境への満足感を示す指標で、必ずしも企業への貢献意欲(ロイヤリティ)とは結びつかず、与えられた環境や待遇に対する評価とも言い換えられます。一方、ワークエンゲージメントは仕事そのものへの熱意や活力といった心理的状態を示す指標です。ワークエンゲージメントが高いということは、組織の心理的安全性が高まり、パフォーマンスが高い状態だといえます。このような状態を目指したいというニーズの高まりから、近年では、ワークエンゲージメントを測定するエンゲージメントサーベイを取り入れる企業が増えています。
「COMPANY Talent Management」シリーズ(以下「CTM2.0」)の「モチベーションサーベイ」機能には、世界共通の測定指標であるUWES(※)の設問を標準搭載しており、設問設定の手間なく利用を始められます。さらに、モチベーションスコアの変動を自動で分析し、特定の基準に合致した従業員にアラートを表示できる機能や、従業員の自由記述を生成AIが自動で分析し、マイナス10点からプラス10点の間でネガティブ・ポジティブスコアを自動算出する機能も備えています。これにより、サーベイを実施するだけで終わらせず、結果を有効に活用して具体的な改善施策に繋げることが可能です。
※UWES:ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度。仕事に関連したポジティブで充実した心理状態を「活力」「熱意」「没頭」の3つのテーマに関する3〜17項目の質問で測定。
人的資本経営

人的資本経営とは、従業員をコストのかかる「資源」ではなく、価値を生み出す「資本」として捉え、従業員のスキルや専門性、経験、モチベーションを最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値を向上させる経営手法です。これまでの人材戦略では人材を「資源」として捉え、従業員の給料や福利厚生にかかる費用をコストと考えてきました。それに対して人的資本経営では人材を「資本」として捉え、研修やスキルアップ、キャリア開発、健康経営、エンゲージメント向上といった継続的な「投資」を行うことにより、企業の持続的な成長や企業価値の向上を目指します。
人的資本経営が注目されている背景
日本では、2022年に経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート2.0」を契機に、人的資本経営への注目が高まりました。さらに、2023年3月期決算からは上場企業の有価証券報告書における人的資本情報の開示が義務化され、人的資本開示の流れが加速しています。
現在では、義務化された項目だけでなく、DX人材やウェルビーイングに関する項目など、自社の戦略や特徴に基づいた独自項目を開示する企業も増えています。
2026年3月期より有価証券報告書の人的資本の開示拡充
政府は2025年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2025」等を公表し、「ジョブ型人事指針」の周知、「人的資本可視化指針」の見直し、有価証券報告書の人的資本に関する情報開示の充実を進める方向性を示しています。2025 年 11 月 には、金融庁がパブリックコメントを発表しており、開示項目として以下が新たに追加される予定です。
- 企業戦略と関連付けた人材戦略及びそれを踏まえた従業員給与等の決定方針
- 従業員の平均給与の対前年比増減率
- (提出会社が主として子会社の経営管理を行う会社(持株会社)である場合)連結会社(外国会社を除く。)のうち、従業員数が最も多い「最大人員会社」(最大人員会社の従業員数が、連結会社(外国会社を除く。)の従業員の過半数を超えない場合には、次に従業員数の多い会社も含む。)の従業員給与の平均額、その前年比増減率等
※参照1:金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)等に対するパブリックコメントの実施について
※参照2:内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2025
こうした人的資本経営の流れを受け、「CTM2.0」では人的資本の可視化・分析を支援する「Human Capital Insight」機能のアップデートを実施。法律やガイドラインに準拠した標準項目の拡充に加え、自社が重視する独自項目を「カスタム指標」として設定し、ダッシュボード上で可視化できるようになりました。これにより、人的資本の開示項目と経営上の重点指標を同時にモニタリングでき、人材投資の意思決定を迅速に行えるようになります。
サクセッションプラン

サクセッションプランとは、将来的に経営や重要ポジションを担う人材を計画的に特定・育成する取り組みで、日本語では「後継者育成計画」ともいいます。経営者・部門長が突然退任するリスクや事業成長に伴うポジション増加に備え、事前に候補者を育てることで、組織の安全性と持続性を確保します。
似た言葉に「人材育成」や「後任登用」がありますが、それぞれ目的や対象、範囲が異なります。人材育成は、従業員全体の能力向上やキャリア形成を目的とした幅広い施策で、研修やOJTが中心です。一方、後任登用は、空席が生じたポジションに即座に適任者を配置する短期的な対応です。サクセッションプランは、経営戦略の一環として後継者を計画的かつ長期的に育成するのが特徴です。
サクセッションプランは、まず対象となるポジションを特定し、必要なスキルや経験を明確化することから始まります。次に後継者候補を選定し、育成計画を策定・実施します。候補者の育成進捗や組織・ポジションの変化に応じて、定期的に計画を見直し、最適化していきます。
「CTM2.0」の「サクセッションプラン」機能では、事業成長・継続の中核を担う重要ポジションに対して、候補者の指名や育成進捗の管理が可能です。経営層や各事業部門長による候補者の登録時には、詳細なジョブディスクリプションと照らし合わせながら候補者情報を確認できるため、候補者の適性や能力を踏まえた精度の高い後継者育成計画の策定が可能となり、組織の安定的な運営と持続的成長を支える基盤を構築できます。
まとめ
今回は、2026年に向けて特に押さえたい3つのキーワードをご紹介しました。人事領域では「人的資本開示の拡充」や「ジョブ型人事の定着」など、大きな制度転換期を迎えます。これからの人事担当者には、単なる制度への対応にとどまらず、従業員のエンゲージメント向上を通じた企業価値向上という戦略的視点が求められます。人材の状態を把握し、俯瞰的に要件を整理し、組織の持続的な成長を実現するためには、人材情報の集約と可視化が不可欠です。「CTM2.0」を活用することで、サーベイによるエンゲージメントの可視化から、人的資本開示に向けたデータ分析、そして次世代リーダーの育成(サクセッションプラン)までを一気通貫でデータ活用することが可能です。
すでになじみのあるキーワードも多かったかと思いますが、2026年の義務化対応を一つの契機として、さらなる成長に向けた施策のヒントにしていただければ幸いです。