2023.3.30
NPO法人とは?種類や活動内容・設立や運営のメリット・デメリットなど詳しく解説
「NPO法人に関する情報を経営活動につなげたい」「NPO法人の設立・運営に興味がある」このような理由から、NPO法人について調べている方もいるのではないでしょうか。そもそも「NPO法人とは何か」「一般企業や一般社団法人と何が違うのか」といった疑問を抱えているケースは少なくありません。
そこで本記事では、NPO法人に関する情報を理解できるよう、NPO法人の特徴や他の団体との違い、設立・運営のメリット・デメリットを解説します。設立方法や手順についても紹介するので情報を知りたい方は参考にしてください。

目次
NPO法人とは
NPO(Non-Profit Organizationの略)法人とは、株式会社や有限会社などと同じ法人団体の1つです。NPO法人は社会貢献活動を活発にし、社会的利益を高めることを目的に活動しているため、特定非営利活動法人とも呼ばれます。営利目的ではないところが、ほかの団体とは異なる点です。
ここからは、NPO法人についてさらに詳しく知るため、種類や活動内容、主な資金源について解説します。
NPO法人の種類と特徴
NPO法人には下記の種類があります。
- 認定NPO法人
- 仮認定NPO法人
- NPO法人
- NPO団体
このなかで、最も社会的信頼度が高いのは認定NPO法人です。認定NPO法人になるには、NPO団体からNPO法人に、NPO法人から仮認定NPO法人、そして認定NPO法人へと認証・認定を受けながら段階を踏む必要があります。認定NPO法人になる際の申請の難易度は高まりますが、認定されると税優遇を受けられる、寄附が集まりやすくなるなどのメリットが得られます。
なお、NPO団体は法人ではないため、代表者のいる個人的な集まりと解釈されることがほとんどです。そのため、申請手続きは特に必要ありません。
NPO法人の活動内容
NPO法人の活動内容は特定非営利活動促進法に基づき、次の20分野に制限されています。
- 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
- 社会教育の推進を図る活動
- まちづくりの推進を図る活動
- 観光の振興を図る活動
- 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
- 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
- 環境の保全を図る活動
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
- 国際協力の活動
- 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
- 子どもの健全育成を図る活動
- 情報化社会の発展を図る活動
- 科学技術の振興を図る活動
- 経済活動の活性化を図る活動
- 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
- 消費者の保護を図る活動
- 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
- 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
※出典:活動分野|内閣府
特定非営利活動促進法は、NPOすべての活動分野を対象とするものではありません。特定非営利活動として見なされるのは、これらに該当し、かつ公共の利益を高めることを目的としている活動のみです。
NPO法人の主な資金源
NPO法人の主な資金源は、主に以下の4つです。
- 事業に賛同した者が見返りを期待せずに提供した資金(会費や寄附金)
- 事業遂行の手助けとして提供された返済不要の資金(助成金や補助金など)
- 委託された事業に対する報酬(事業収入)
- 資産運用で得た資金(投資や預金など)
NPO法人は非営利活動をする団体のため、事業を通して得た剰余金(利益)は、事業計画の資金に充てられます。また、寄附金制度や減税措置が法整備されているところも特徴です。
ただし、補助金や助成金は必ずしも支給されるという保証はありません。公的な資金が財源となるため条件や審査は厳しく、NPO法人のなかには受け取れないケースもあります。
NPO法人と一般企業・一般社団法人との違いは?

NPO法人と類似する団体に、一般企業と一般社団法人があります。それぞれの特徴とNPO法人との違いについて解説します。
一般企業との違い
株式会社や有限会社、合同会社といった一般企業とNPO法人は事業目的が異なります。一般企業の場合、営利目的(事業で生まれた余剰収益を出資者に分配し、社会にお金を循環させること)の事業を主業務として行っています。一方、NPO法人は公共の利益を高める事業を行うため、主な業務は特定非営利活動です。
一般社団法人との違い
NPO法人も一般社団法人も、非営利活動を主業務としているのは同じです。ただし、NPO法人は、特定非営利活動が主業務のため、活動内容に制限があります。一方、一般社団法人はNPO法人ほど制限されていないため、幅広い活動が認められています。
NPO法人設立・運営のメリット
NPO法人を設立・運営するメリットは複数あります。具体的には、以下の6つです。
- 税金の優遇が受けられる
- 補助金・助成金が受けられる
- 設立費用を軽減できる
- 社会的信用が高い
- 人材を雇い入れやすい
- 公的機関との事業連携が容易
それぞれ解説します。
税金の優遇が受けられる
社会的利益を目的とするNPO法人は、各税目に軽減措置や免除といった税金の優遇が受けられます。対象となる税金として以下のものが挙げられます。
- 法人税
- 法人住民税
- 消費税
- 印紙税
- 固定資産税
- 事業所税 など
特定非営利活動に分類される事業の所得(利益)には、法人税がかかりません。つまり、資金源である入会費や会費といった収入は、課税の対象外になるのです。また、税制控除との選択制が導入されたことで、寄附金の最高控除率が50%、控除方法の選択が可能になるといったメリットもあります。
補助金・助成金が受けられる
NPO支援の関心が高まるなか、補助金や助成金を支給する行政機関や民間団体が増えています。補助金・助成金は借入ではないため返済義務がありません。事業を行う上で貴重な資金源となるでしょう。
補助金助成金を受けるためには、審査を受ける必要があります。それぞれの受給基準・条件などを確認しましょう。
設立費用を軽減できる
会社を立ち上げる際は、収入印紙代や登録免許税など、さまざまな経費が発生します。しかし、NPO法人は登録免許税法第2条の対象外になるため、設立費用が免除されます。費用面に関しては、ほかの法人団体よりも設立しやすいのは確かです。
なお、NPO法人の設立にかかる費用は、住民票請求や印鑑の作成などにかかる諸経費のみです。
社会的信用が高い
NPO法人には情報公開の義務があります。役員名簿や定款、毎年の事業報告書などが都道府県庁や内閣府のホームページ上で公開されています。どれも法人運営の健全性を示す書類であるため、社会的信用が高くなる要因になるのです。
また、社会的信用が高いと寄附が集まりやすいため、収入を増やせるといったメリットにつながります。
人材を雇い入れやすい
NPO法人は活動を行うために必要な人材を雇用できます。社会的に信用が高ければ、人材は集まりやすくなるものです。組織が大きくなれば、全国に展開して事業規模を拡大したり、いずれは海外進出したりすることも可能です。
また、NPO法人は一般企業と同様、厚生年金や雇用保険、健康保険などへの加入もできます。社員として雇用できるため、ボランティアに頼らない組織をつくれます。
公的機関との事業連携が容易
国や地方公共団体などの公共機関では、福祉関係を中心とした事業委託が増加傾向にあります。業務委託による人材や事業の拡充が図られ、事業分野で重なる部分が多いNPO法人との連携が重要視されているのです。そのため、NPO法人は公的機関との業務連携がしやすくなっています。
NPO法人設立・運営のデメリット

複数のメリットがある一方、NPO法人設立・運営には次のようなデメリットがあります。
- 設立に必要な期間が長い
- 活動内容が制限される
- 事務処理に手間がかかる
- 事務報告の義務がある
それぞれ解説するので、後から知って後悔しないためにもチェックしてみてください。
設立に必要な期間が長い
NPO法人の設立には長い期間を要します。他の法人団体とは異なり、NPO法人を設立するためには、国民による精査や認可が必要です。
申請は、次のような手順に沿って行われます。
- 縦覧(2週間)
- 審査(2ヵ月)
- 登記(2週間)
つまり、NPO法人を設立するには、最低でも3ヶ月は必要ということです。また、認証日から6ヵ月以上経過しても登記が行われない場合、認証が取り消される可能性があるため注意が必要です。
活動内容が制限される
NPO法人の活動内容は、特定非営利活動によって制限されています。不特定多数の利益につながる分野に指定されるため、環境保全や災害救護、観光の振興といった活動に限定されます。
また、申請時には、特定非営利活動を主業務としている旨を記載した定款や事業計画書などの提出が必要です。公的機関や民間団体から助成金や補助金が支給されることもあるため、公益性があるかどうか厳しくチェックされます。
とはいえ、特定非営利活動を行う事業者として税率の優遇や、設立費用の軽減など、得られるメリットは大きいものです。
事務処理に手間がかかる
NPO法人は所轄庁(法人の認証や監督を行う行政機関)に対し、事業年度ごとに事業報告書を提出しなければなりません。同時に、収支計算書や社員名簿の提出も必要です。これらを管理・作成するのは手間がかかるため、担当者の負担は大きいものです。
また、NPO法人の定款を変更する場合、他の法人団体よりも手続きが複雑な上、審査に時間がかかります。申請時には、事業計画書と活動予算書の提出が求められるため、ここでも事務処理に手間がかかるでしょう。
事務報告の義務がある
NPO法人は毎年、事業年度開始から3ヵ月以内に事業報告書の作成・提出が必要です。事業報告書には、前年度の事業報告書や計算書類、財産の目録、年間の役員名簿、社員名簿などを記載します。作成した事業報告書は、約5年間の保管が義務付けられています。
なお、3年以上事業報告書を作成・提出しない場合は、認証が取り消される可能性があるため注意が必要です。
NPO法人の設立方法と手順
NPO法人を設立する際は、次の手順に沿って行うことが一般的です。
- 活動分野を確認する
- 設立発起人会を開催する
- 設立総会を開催する
- 設立認証を申請する
- 法人設立の登記申請手続きを行う
- 法人設立の届け出を行う
- 設立後に必要な申請を行う
それぞれの手順に関する詳細を説明する前に、まずは、NPO法人設立の条件や申請基準について解説します。
NPO法人設立の条件・申請基準
NPO法人の認証基準は、法律によって規定されており、設立するためには次のような条件・申請基準を満たす必要があります。
- 特定非営利活動を主たる目的に設立している
- 社員に不当な条件を付けない
- 設立の手続き並びに申請書及び定款の内容が法令の規定に適合している
- 役員のうち報酬を受ける役員の数が役員総数の1/3以下である
- 特定の公職者の支持・反対することを主な目的にしない
- 暴力団又は暴力団の構成員等の統制の下にある団体ではない
- 宗教・政治に関与していない
- 10人以上の社員を有する
NPO法人を設立するには、これらの条件をすべて満たすことが必要です。NPO法人を設立する際の手順について詳しく解説していきます。
手順1.活動分野を確認する
NPO法人が活動できる分野は、特定非営利活動で定められている20項目のみです。申請する前に、活動分野が20項目に該当するかどうかを確認しましょう。なお、20項目すべてに該当する必要はありません。1つでも該当していれば、NPO法人の申請手続きを行う要件は満たしていることとなります。
手順2.設立発起人会を開催する
設立発起人とは、設立する人たちのことを指します。設立発起人会を開催し、設立するNPO法人の基本的な部分を決定します。
決定すべき主な事項は、以下の項目です。
- 設立の趣旨
- 活動目的
- 法人名
- 代表者
- 主たる事務所
- 事業年度
- 設立までのスケジュール
- 入会金や会費
設立発起人会をせずに、次の設立総会を開催することも可能です。しかし、基本的なルールや目的をお互いにすり合わせておくことで、後々、認識のズレが生じるのを防げます。
手順3.設立総会を開催する
全社員を集めて設立総会を開催します。設立発起人会で決めた内容を元に異議がないか確認し、最終的な意思決定を行います。次の「設立認証の申請」では、意思決定を証明する必要があるため、設立総会では議事録をとることが重要です。
議事録は、議長と議事録署名人となる2名の署名、もしくは記名押印をして完成となります。登録手続きを行う際には原本が必要です。設立申請を行うときは、コピーしたもの(謄本)を提出しましょう。
手順4.設立認証を申請する
事務所設置場所を所管する所轄庁に、設立認証の申請を行います。申請時には設立認証申請書や定款、設立総会議事録、役員名簿、事業計画書、活動予算書などの提出が必要です。不備がなければそのまま受理され、NPO法人ポータルサイトにて1ヵ月間公開されます。
仮に、公開期間中に不備や記載漏れなどがあった場合、軽微な修正であれば訂正することもできます。結果が下されるまでの期間は、申請から3ヵ月程度です。不認証の場合、その理由も通知されます。該当箇所を訂正した後、再度申請を行うことも可能です。
手順5.法人設立の登記申請手続きを行う
無事に認証されると、所轄庁から「認証書」が届きます。交付されてから2週間以内に管轄する法務局で「NPO法人設立登記申請」の手続きを行いましょう。
設立登記申請を行う際は、次のものが必要です。
- NPO法人の印鑑
- NPO法人の印鑑届出
- 定款
- 宣誓書
- 理事の就任承諾書
- 設立時の財産目録
- 代表者個人の印鑑証明書
認証書が届いてから2週間以内という短い期間で申請する必要があるため、前もって準備しておくと良いでしょう。なお、設立登記申請を行うための費用はかかりません。
手順6.法人設立の届け出を行う
設立登記の申請手続きが完了したら、所轄庁へ法人設立の届け出を行います。ここまで完了して、ようやくNPO法人の設立となります。
なお、認証を受けてから6ヵ月以上設立登記を行わない場合、認証が取り消されるため注意が必要です。一からやり直しになるため、後回しにせず、早めに対処しましょう。
手順7.設立後に必要な申請を行う
NPO法人として登記完了後は、税金や労働保険、社会保険など各種申請を行います。税金関係の場合は、申請場所は税務署です。収益事業を行うか行わないかによって対応が異なります。
収益事業を行う場合は、税務署・都道府県税事務所・市町村の税務担当窓口にて、「法人設立届出書」と「収益事業開始届出書」を提出します。一方、収益事業を行わない場合は、都道府県税事務所・市町村の税務担当窓口にて「法人設立届出書」のみを提出します。
労働保険や社会保険の届け出も、各窓口で行いましょう。
NPO法人は社会的利益を目的に設立する非営利活動法人
NPO法人とは、株式会社や有限会社などと同じ法人団体の1つであり、社会的利益を高めることを目的に活動する団体です。活動内容は、特定非営利活動によって限定されるものの、税金の優遇や補助金・助成金が受けられるなど、さまざまなメリットが得られます。
営利目的ではなく、社会的利益を目的に会社を立ち上げたいなら、NPO法人も検討してみると良いでしょう。
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