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2022.5.17

【職種別】コンピテンシー項目例と具体的行動。スキル・能力との違いから導入手順まで

コンピテンシーとは、高い業績を上げる従業員(ハイパフォーマー)に共通して見られる「行動特性」のことです。

「スキル」や「能力」とは異なり、それらを実際の業務でどう活用し、成果に結びつけているかという「具体的な行動」に焦点を当てた概念です。コンピテンシーの概念を活用することで、企業は客観的な人事評価を実現し、生産性の向上や採用のミスマッチ防止、定着率の向上を図ることができます。 本記事では、スキル・能力・職能技能・コアコンピタンスとの違いから、具体的な項目例、活用手順まで詳しく解説します。

コンピテンシーの意味とは?

コンピテンシー(Competency)は英語で、「能力」という意味を持つ言葉ですが、今回説明するコンピテンシーはビジネス、とりわけ人事業界で使われる用語であり、企業において高い成果や業績を上げている従業員(ハイパフォーマー)に共通して見られる「行動特性」のことを指します。

例えば、ビジネスの現場で成績のよい従業員には、「傾聴力がある」という能力だけではなく、「顧客の潜在的な不満を汲み取り、先回りして解決策を提示し、制約に繋げる」コンピテンシーが備わっており、このような具体的な行動にフォーカスするのが特徴です。

コンピテンシーを活用すると、実際に成果を上げている従業員の特性をもとに、育成や教育が図れるため、改善点がわかりやすく、取り組みやすいメリットがあります。そのため、近年ではコンピテンシーを評価制度や採用活動に取り入れる企業が増えています。採用現場では、行動特性をもとに、自社に適した人材かどうか判断しやすくなるうえに、評価を統一できるため面接担当者による評価のブレが防げます。

スキル・能力・職能技能との決定的な違い

コンピテンシーと混同されやすい「スキル」「能力」「職能技能」には、明確な視点の違いがあります。これらを正しく使い分けることで、より精度の高い人事評価や教育計画が可能になります。

用語意味・定義評価の視点
コンピテンシー成果を生む具体的な行動特性成果に結びつく「行動」ができているか
スキル訓練で得た知識や技術(技能)どのような「道具(技術)」を持っているか
能力(アビリティ)本人が持つ資質や適性どのような「可能性」を秘めているか
職能技能職務遂行における習熟度知識や経験がどれくらい「蓄積」されているか

スキル(Skill)

訓練によって習得した「具体的な技術や知識」です。例えば「英語が話せる」「Excelで関数が組める」などが該当します。しかし、スキルを持っていても、それを実務で成果に繋がる形で発揮できなければ、コンピテンシーが高いとは言えません。

能力(Ability)

その人が潜在的に持っている「資質や適性」です。「地頭が良い」「コミュニケーションの素養がある」といった、いわば「OS」の部分を指します。コンピテンシーは、この能力を「特定の状況でどう使いこなしているか」という表面化した行動を指します。

職能技能(職務遂行能力)

日本の伝統的な人事制度で重視されてきた「職務を遂行するための習熟度」です。経験年数や知識の蓄積を重視しますが、コンピテンシーは「経験の長さ」ではなく、あくまで「今、成果に直結する行動をとっているか」という再現性を重視します。

個人の「コンピテンシー」と組織の「コア・コンピタンス」はどう違う?

似た言葉に「コア・コンピタンス(Core Competence)」がありますが、これは評価の対象が異なります。個人の行動特性を示すコンピテンシーに対し、コア・コンピタンスは、企業が強みとする技術や特色を指します。競合他社から模倣されない力、顧客に満足してもらえる能力や技術などを指します。具体例として、ホンダのエンジン技術やシャープの液晶技術などが挙げられます。

そして、コンピテンシーとコア・コンピタンスの違いは、対象となるものが「個人」になるのか、「組織」になるのかという点です。コンピテンシーは個人を対象にしていますが、コア・コンピタンスは組織を対象としています。

優秀な従業員が成果を上げる行動をとり、企業に貢献する力をコンピテンシー、組織が顧客や社会のために能力を発揮する力をコア・コンピタンスだと覚えておくとよいでしょう。

なぜ今、コンピテンシーが再注目されているのか?

コンピテンシーは、1970年代にハーバード大学のデイヴィッド・C・マクレランド教授の研究から誕生しました。マクレランド氏が業績の高い従業員を調査したところ、学歴や知能指数よりも、共通した「行動パターン、価値観、思考」こそが業績に強い相関があることを突き止めたのです。

日本では1990年代、バブル崩壊後の「成果主義」への転換を機に導入が進みました。そして2026年現在、以下の理由から再びその重要性が高まっています。

労働人口減少に伴う生産性の追求

少子高齢化により労働力が減少する中、企業が生き残るためには「労働量」ではなく「生産性(労働の質)」を高めることが不可欠です。個人の潜在的な能力に期待するだけでなく、成果を生む行動をモデル化し、組織全体に定着させるコンピテンシーの重要性が再認識されています。

働き方の多様化と評価の客観性

リモートワークや副業など働き方が多様化し、上司が部下の業務プロセスを細かく把握しにくい現代において、「どのような行動が成果に繋がったか」という客観的な指標は、公平な人事評価を行うために有効活用できます。

DXやAI時代に求められる思考と行動

デジタル技術やAIの活用が当たり前になる中で、単なる操作スキルだけでなく、新たな技術を駆使して課題を解決し、価値を創出する「コンピテンシー(行動特性)」が、企業の競争優位性を左右するようになっています。

コンピテンシーの活用方法

コンピテンシーが活用できる場面は、以下の3つです。

  • 人事評価制度
  • 採用活動
  • 人材育成

それぞれ効果的に活用できるよう、詳しく解説します。

人事評価制度に取り入れる

近年、コンピテンシーを人事評価に導入する企業が増えています。コンピテンシーは、企業において高い成果を上げている社員をロールモデルとし、どんな行動特性があるのかを洗い出して指標を決めるので、人事評価の基準が明確になるのが特徴です。

人事評価する際は、指標に基づいて行動できたかで評価するため、評価者の主観に捉われず、ブレのない評価がつけられます。企業が社員に求めることは、高いスキルを活用して成果を上げてもらうことです。

社員が自ら行動するよう促す意味でも、人事評価制度にコンピテンシーを活用する企業が増えています。

コンピテンシー評価についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:
コンピテンシー評価シートとは?書き方やサンプル・項目例を紹介

採用活動に取り入れる

コンピテンシーは、採用基準を明確にする指標の一つにもなります。事前に、自社で活躍する社員のコンピテンシーをモデル化し、採用基準を設定することで、入社後に活躍できる人材かどうかを判断しやすくなるのがメリットです。

面接では「直近1年以内に成果を上げたエピソード」や「どのような成果を上げることができたのか」などを質問することがポイントです。

その上で、「成果を上げるためにどのような行動をしたのか」「なぜその行動をとったのか」を深掘りすると、採用候補者のコンピテンシーが明確になり、自社のコンピテンシーと照らし合わせることができます。これにより、自社が求める人材かどうかを判断しやすくなるのが特徴です。

さらに、コンピテンシーを採用活動に取り入れることは、面接官や採用担当者による評価のバラつきの軽減にもつながります。採用基準に沿って評価されるので、印象や感覚といった主観的な評価が少なくなります。採用に関わる社員が共通認識をもって対応できるので、自社に合った人材の見落としも防げるでしょう。

人材育成に取り入れる

コンピテンシーは、優秀な人材を育成する際にも役立てられているのが特徴です。自社で高い成果を上げている社員の行動特性を示すことで、「どのように考えて、どのような行動をとると結果につながるのか」を社員に伝えることができます。

さらに、示した行動特性をもとに、コンピテンシーに基づいた目標を設定してもらうことも重要です。目標設定することでやるべきことが明確になり、成果を上げるために努力しようと思える環境が作れます。積極的かつ自発的な行動が促されるので、優秀な人材を効率よく育成することが可能です。

コンピテンシーを活用すると、高いモチベーションを維持しやすいといったメリットもあります。例えば、上司から「もっとやる気を出せ」「誠意を見せろ」と注意されても、曖昧過ぎて何をどう改善すべきか分かりません。

しかし、コンピテンシーによって行動特性が示されていれば、やるべきことが具体的に理解できるので、社員一人ひとりが納得のいく行動指針を立てられます。

コンピテンシーの概念を活用するメリット・デメリット

コンピテンシーの考え方を人事評価や採用活動に取り入れることで、組織と個人の双方に大きなメリットが生まれます。

人事評価制度にコンピテンシーを活用するメリット

人事評価にコンピテンシーを活用すると、評価基準が「具体的行動」へとシフトするため、以下のような効果が期待できます。

【人事評価に活用する4つのメリット】

  • 優秀な人材が効率良く育成できる
  • 社員が目指すべき目標が明確化し行動しやすくなる
  • 社員の納得感や公平性が高まる
  • 評価者側の負担が軽減される

社員のモチベーション向上や、人事評価の負担軽減にもつながる重要な部分です。一つずつチェックしていきましょう。

優秀な人材が効率良く育成できる

コンピテンシー評価では、優秀な人材を効率良く育成できるのがポイントです。コンピテンシー評価には、実際の業務に即したロールモデルが存在しています。ロールモデルが評価基準になっていれば、社員は企業が求めていることを明確に理解することが可能です。

求められていることが分かれば自ずとやるべきことが見えてくるため、自発的な成長を促して即戦力のある人材が育成しやすくなります。また、課題点も可視化されるので、自分では気付きにくい欠点にも気付くことができ、改善・成長してさらに企業へ貢献してくれるはずです。

社員が目指すべきロールモデルが明確になり、行動しやすくなる

コンピテンシー評価では目指すべきロールモデルが明確化されているため、目標に向かって行動しやすくなるのが特徴です。

例えば、成果を上げている社員には「さまざまな情報源にアクセスしている」「指示される前に行動ができている」などの特徴が共通して見られます。コンピテンシー評価ではこれらの特性が明確に定まっているため、各社員が自らどのように行動すればよいのかを考えて実行することができるようになります。

「積極性をもって取り組むこと」と言われると具体的な行動に移すことが難しくなってしまいますが、コンピテンシー評価では社員が迷わず目標に向かって努力することができるので、高いモチベーションを維持しやすくなるのがメリットです。

客観的な指標により、評価の納得感や公平性が高まる

コンピテンシー評価において評価基準となるものは、具体的な行動です。協調性や責任感など抽象的なものではなく、客観的な指標のもとで評価されるので、社員の納得感が高まります。また、評価者側による主観的な意見が評価に反映されにくくなるのもメリットです。

公平性の高い評価がつけられるので、企業に対する信頼感や社員のモチベーション向上にもつながるでしょう。

評価基準が明確なため、評価者(マネジャー)の負担が軽減される

コンピテンシー評価では、ロールモデルとして定めた行動基準を満たしているかそうでないかで評価できるため、評価者側が評価しやすくなります

従来主流となっていた職能資格制度(能力評価)は、評価基準が曖昧であったため、主観に左右されやすいという問題がありました。これにより、社員からの納得感が得にくく、時間をかけてつけた評価が不満の原因になることも珍しくありませんでした。

その点、コンピテンシー評価は「しているか」「していないか」で判断できるので、答えが明確な分、評価しやすいのがメリットです。社員からも納得感を得られやすく、不満が生まれにくいところも評価者側の精神的負担軽減につながるでしょう。

採用活動にコンピテンシーを活用するメリット

採用にコンピテンシーを活用することは、以下効果が期待でき、企業の将来を左右する定着率の向上にも直結します。

【採用活動に活用する3つのメリット】

  • 面接官による評価のバラつきが防げる
  • 自社が求める人材を明確に提示できる
  • 採用活動の負担を軽減できる

企業の今後にも関わる重要な項目です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

面接官による評価のバラつきが防げる

コンピテンシーを定めておくことで、自社の求める人材が明確になることがメリットです。面接時には、印象や感覚といった主観的な評価も大切ではあるものの、そこを重視してしまうと面接官によって評価にバラつきが生じやすくなります。

誰の意見を尊重するべきか迷ったり、望ましい人材を見落としたりする可能性もあるでしょう。コンピテンシーがあることで、面接官は基準に沿って評価を行えばよいので、評価のバラつきが最小限に抑えられます。

また、コンピテンシーの活用は、新しく採用担当者を配置した場合にも効果的です。採用基準の項目が明確にそろっているので、より早くキャッチアップができます。経験不足による評価のバラつきも防げるのがポイントです。

自社が求める人材を明確に提示できる

応募者に対して、自社がどんな人材を求めているのか明確に提示できるようになるのもメリットです。応募者は、自分が求められている人材かどうか判断しやすくなるので、満足度が上がったり企業をより理解してもらえたりする効果が期待できます。

入社後にどのような行動が求められるのかを把握してもらえるので、入社前と後のギャップが埋められるのも魅力です。企業にとっては、早期離職のリスク軽減にもつながります。

採用活動の負担を軽減できる

コンピテンシーの活用は、採用担当者の負担軽減にもつながるのが特徴です。コンピテンシーに基づいた質問項目や評価項目を事前に定めることができるため、面接で何を聞けばよいのか分からない、どういう答えが評価に値するのか分からない、という事態が防げます。

とくに、採用担当者のスキル不足が課題となっている企業にとっては効果的です。例えば、コンピテンシーを活用していない面接では、学歴や資格、志望動機、さらには見た目などから、自社に適した人材かどうか判断しなければいけません。

これでは表面しか見えていないので、採用担当者にスキルがなければ、適していない人材を採用してしまうこともありえます。コンピテンシーの活用により、採用基準が統一されることで、採用担当者は客観的に評価を付けられるようになり、自社に適した人材を見抜きやすくなるのがポイントです。

コンピテンシーを活用するデメリット

コンピテンシーには魅力的なメリットが複数ある一方で、以下2つのデメリットがあります。

【デメリット】

  • コンピテンシーを定めるのが難しい・時間がかかる
  • 手間のかかるアップデートが不可欠

コンピテンシーを導入するべきか否かを検討する項目になるので、メリットと比較しながらチェックしてみてください。

コンピテンシーを定めるのが難しい・時間がかかる

コンピテンシーには正解がなく、効果的なものにするためには自社独自の基準で設定しなければいけないため、定めるのが難しく時間もかかります。

まずは、成果を出している社員のピックアップ、そしてヒヤリングした内容を言語化して社員に分かりやすくまとめて共有する作業が必要です。また、ロールモデルとなる社員が、必ずしも成果を上げている理由を自分で認識しているとは限りません。

認識していない場合は、ヒヤリングをしてもコンピテンシーの指標につなげることが難しくなります。さらに、コンピテンシーは全職種・全役割において定めなければいけません。複数の社員にヒヤリングする必要があるので、設定に時間がかかります。

手間のかかるアップデートが不可欠

コンピテンシーは、設定した後も小まめにアップデートする必要があります。基準が明確で細分化して決められている分、柔軟性に乏しく事業内容や業務内容などの変化に対応するのが困難です。

時代や市場の変化によって、企業側でも業務内容や組織図、経営体制などは変わるものなので、その都度アップデートや修正、ときには試行錯誤も必要になってしまいます。また、コンピテンシーをアップデートした後は、社員に浸透させなければいけません。そこにも時間と手間がかかるので、担当者の負担は増えるでしょう。

コンピテンシーのモデルを作成する上で参考になる型

コンピテンシーには、目標とするモデル作成が必要です。その際、参考になるのが以下3つの型です。

【コンピテンシーモデルの型】

  • 実際の社員をモデルにする「実在型モデル」
  • 理想とする人物像を作る「理想形モデル」
  • 上記2つを組み合わせた「ハイブリッド型モデル」

自社に適したコンピテンシーのモデルを作成できるよう、チェックしておきましょう。

実際の社員をモデルにする「実在型モデル」

実在型モデルは、自社で成果を上げている社員をロールモデルとして作成する、3つの中で最も主流の型です。実態に即したモデルが作成できるので、比較的実用性のある型だと言えます。

また、イメージをつかみやすいので現場にも取り入れやすく、スムーズな導入が可能です。ただし、実在型モデルをベースとする場合は、ほかの社員でも達成しうるものなのかを慎重に検討する必要があります。

難易度が高いと、モチベーションを下げる要因にもなり兼ねません。さまざまな社員にあてはめて策定していくことが重要です。

理想とする人物像を作る「理想形モデル」

理想形モデルは、自社が理想とする人物像を策定し、その人物像の行動特性を抽出してコンピテンシーを定める手法です。企業理念や事業戦略などから、どのような思考をもって行動できる人物を求めるのか策定します。

実在する社員の行動を洗い出したり、ヒヤリングしたりする必要性がないので、実在型モデルよりも難易度は低いのが特徴です。また、起業したばかりでロールモデルとなる社員がいない企業でも導入しやすいでしょう。

ただし、現実に即したものにする調整が難しく、理想を追い求めすぎると現実的ではないモデルが作成されかねません。ハードルが高すぎると、社員のモチベーションが低下する恐れがあるので、うまく調整できるかどうかがポイントです。

上記2つを組み合わせた「ハイブリッド型モデル」

ハイブリッド型モデルは、実在型と理想形のメリットを組み合わせた手法です。

企業理念や事業戦略などの理想から逆算して考えたものから、実態に即していないものを取捨選択してモデルを作成します。

実用的でありつつ、作成難易度が下がるので、コンピテンシーを初めて導入する企業におすすめです。

コンピテンシーを導入する手順

最後に、コンピテンシーを導入する手順をチェックしておきましょう。ポイントを踏まえながら解説するので、効率よく進めたい人は参考にしてみてください。

【コンピテンシーを導入する手順】

  1. 高い成果を上げている社員へヒヤリングを行う
  2. ヒヤリング内容からコンピテンシーを抽出する
  3. 企業のビジョンと照らし合わせて取捨選択する
  4. 取り入れるコンピテンシーを選定する
  5. 選定したコンピテンシーをレベル分けする
  6. テスト・調整をして完成させる

高い成果を上げている社員へヒヤリングを行う

まずは、自社で高い成果を上げている社員(ロールモデル)を選び、ヒヤリングを行います。ヒヤリングする際は「なぜ成果が上がっているのか」「どんな行動をしているのか」など、細かく深堀りすることが重要です。

ただし、対象社員が自分で分かりやすく言語化できるとは限らないため、担当者が上手にヒヤリングしなければいけません。また、対象社員が何気なく行っている行動が、成果につながっている場合もあります。

同僚や上司、部下などにもヒヤリングを行い、対象社員の仕事ぶりを観察するのも有効です。対象社員自身が気付けていない行動特性を見つけられるかもしれません。

ヒヤリング内容からコンピテンシーを抽出する

次に、ヒヤリングした内容を振り返り、コンピテンシー(行動特性)を抽出しましょう。このとき、後述コンピテンシー・ディクショナリーで定義されている評価項目と照らし合わせると、コンピテンシーを絞り込みやすくなります。

とはいえ、コンピテンシーは自社独自の基準で設定しなければ効果的なものにはなりません。そのため、コンピテンシー・ディクショナリーの評価項目は、あくまでも参考程度に留めておくことがポイントです。自社にとって必要だと思われる行動に絞って抽出しましょう。

企業のビジョンと照らし合わせて取捨選択する

抽出したコンピテンシーを、企業のビジョンやバリュー、ミッションなどと照らし合わせます。必要なものは残しますが、企業のビジョンなどと合致しないものは、行動特性としてふさわしくないので排除してください。

この段階では、企業のビジョンなどと合致しているものはすべてピックアップしておきましょう。多少数が多くても、この後の工程で数をしぼるので問題ありません。

取り入れるコンピテンシーを選定する

すべての項目を取り入れてしまうと運用が大変になってしまいます。取り入れるものと取り入れないものとを分類しましょう。

分類するときのポイントは、選定したコンピテンシーの中でもとくに成果をあげるために重要なものや、企業が大事にしたいものを選ぶことです。

企業のビジョンなどと合致していても、優先度や重要度が低いものは排除することで、運用の負担を軽減できます。

選定したコンピテンシーをレベル分けする

次に、選定したコンピテンシーをレベル分けしましょう。レベルは3〜5段階くらいに分けると、細かすぎずちょうどよいと言われています。

新入社員に目指してほしいもの、中堅社員に目指してほしいもの、ベテラン社員に目指してほしいものなど、立場や役職ごとに分けると評価しやすくなります。

また、レベル分けをするときは、各評価項目の尺度も決めなければいけません。組織に共通する尺度がないと、評価が曖昧になってしまいます。評価項目に対してどのくらいできれば4なのか、3と4の評価基準の違いは何かなど、より具体的に設定するようにしましょう。

テスト・調整をして完成させる

レベル分けまでできたら、テストしてチェックを行います。まずは、企業で高い成績をおさめている社員の行動と、作成したコンピテンシーを照らし合わせてみてください。高い評価が得られるかを確認し、実態に即しているかをチェックしましょう。

また、成績が中程度の社員についても同じように評価してみて、高い成績をおさめる社員よりも評価が高くならないか確認します。

このように、複数人をサンプルとしてテストし、試行錯誤を繰り返すことで、より精度の高いコンピテンシーを策定できます。

【職種別】コンピテンシーの項目例と具体的な行動特性

コンピテンシーを実務で活用する際、指標の「辞書」として役立つのが「コンピテンシー・ディクショナリー」です。

コンピテンシー・ディクショナリーとは、コンピテンシーをモデル化するときに、ベースとなる評価項目をリスト化したものです。1990年代に、ライルM.スペンサーとシグネM.スペンサーによって開発されました。

コンピテンシーの評価項目群には、「達成とアクション」「支援と人的サービス」「インパクトと影響力」「マネジメント・コンピテンシー」「認知コンピテンシー」「個人の効果性」の6つの領域を大枠とし、そこからさらに20項目に細分化し分類されています。

コンピテンシー・ディクショナリーの詳細はこちらの記事で解説しています。

関連記事:コンピテンシー評価とは?評価シートの書き方や例文、項目例、 導入ステップを解説 

一般的には「リーダーシップ」や「問題解決」など、ビジネス全般に共通する項目が並びますが、自社で活用する際には、これらを職種ごとの具体的な業務や役割に合わせてカスタマイズ(言語化)することが不可欠です。

ここでは、代表的なコンピテンシー・ディクショナリーの領域に基づき、各職種で求められる具体的行動の例をご紹介します。自社独自のコンピテンシーモデルを構築する際の参考にしてください。

職種ディクショナリー領域コンピテンシー名項目名具体的な行動
営業・ビジネス職問題解決課題への迅速な対応顧客ニーズの深掘り単に要望を聞くだけでなく、顧客の背後にある経営課題を仮説立てて質問し、潜在的なニーズを言語化して提案に繋げる。
営業・ビジネス職リーダーシップ戦略的思考目標達成への執着心困難な状況でも代替案を即座に検討し、周囲のリソースを巻き込みながら期限内に目標を完遂する。
技術・技能職問題解決創造的な解決策の提案改善(カイゼン)への探究心従来の作業手順を疑い、職能技能を活かしてミスの発生源を特定。自動化やツール導入を自ら提案し、生産性を劇的に向上させる。
技術・技能職リーダーシップ部下の育成とサポート技術承継の主体性自身の暗黙知をマニュアル化し、若手への指導を計画的に行うことで、チーム全体の技能レベルを底上げする。
事務・バックオフィス適応力変化に対する柔軟性業務プロセスへの高い規律性定型業務において、ミスを防ぐための独自のチェックリストを運用し、常に安定したクオリティとスピードを維持する。
事務・バックオフィス継続的な学習・自己改善フィードバックの活用AI活用の習熟と改善生成AI等のツールを日常業務(文章校正やデータ整理)に組み込み、業務時間を削減するとともに、より付加価値の高い実務へ注力する。
アルバイト・店舗スタッフ問題解決課題への迅速な対応状況適応と自律的行動混雑時に指示を待つのではなく、優先順位を瞬時に判断して動線を整え、顧客の待ち時間を最小限に抑える行動をとる。
全職種共通(追加)コミュニケーション明確な情報伝達能力プロンプトエンジニアリングAIへの指示(プロンプト)を具体化・構造化して伝え、期待通りのアウトプットを最短で引き出すことで、チームの意思決定を早める。

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コンピテンシーとは、高い業績をおさめる社員に共通してみられる行動特性のことです。自社に適したコンピテンシーを評価指標として活用することで、人事評価制度や採用活動においてさまざまなメリットが得られます。

評価制度が年功序列から成果主義に移行する企業が増えている今、コンピテンシー評価は多くの企業から注目されているものです。とはいえ、自社に適したコンピテンシー評価を策定するのは容易ではありません。

策定するまでには時間や労力がかかる上、導入した後も定期的なメンテナンスが必要です。抱えている業務と並行して導入・運用するのは、現実的に難しい企業も少なくないでしょう。

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例えば、目標管理や評価は項目を簡単に設定できるので、その都度コンピテンシーに基づいた目標を設定できます。また、多面評価にも対応しているので、さまざまな観点から評価を受けた社員は、今後の目標を自発的に立てて成長しようと努力するでしょう。

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