2021.3.2
クレドとは?会社経営に欠かせないクレドを基礎から徹底解説
クレドという言葉を聞いたことがあるでしょうか。クレドは、企業経営において重要な役割を果たすものです。経営理念や企業理念と似た面があり混同されがちですが、相違点もあります。クレドとは何かを十分理解していないと、クレド導入による効果は期待通りには出てこなくなってしまいます。そこで、クレドの定義や導入メリット、導入事例、さらには導入時の注意点などについて解説します。

目次
クレドとは
クレドとは、企業に勤める従業員全員が心がけるべき信条のことです。また、具体的な行動指針としての性格も有しています。企業がクレドを作成する目的としては、企業改革や組織環境開発、コンプライアンス経営の実現などがあげられます。クレドの特徴は、会社が事業を進めていくにあたって遭遇する具体的な事実を元に作られることです。抽象的な概念ではなく、具体事例に基づいた行動指針や信条がクレドだといえます。
クレドは、ラテン語で「信条」「志」「約束」を意味する言葉です。経営理念と似たような性格を有していますが、クレドと経営理念は異なります。経営理念と異なるクレドの特徴は、従業員に対してより深く浸透させ、共有することを意識して作られている点です。クレドは経営理念のような抽象概念にとどまらず、業務活動や行動に直結した表現で作成されます。具体的な行動指針の形をとることによって、従業員への視認性を高めるのです。クレドは、大手医療機器メーカーである「ジョンソン・エンド・ジョンソン」が経営ツールとして考案・導入したことによって、世間に広まりました。日本国内でも、導入する企業が増加している状況です。
クレドとMVVの違い
クレドを理解するためには、MVVとの違いを知っておく必要もあります。MVVは、ミッション・ビジョン・バリューの頭文字をとったものです。クレドとMVVとの違いを把握するにあたっては、まずMVVにおける「ミッション」「ビジョン」「バリュー」とは何かを知っておくことが重要になります。MVVにおける「ミッション」とは、企業の目的や使命、任務のことです。ミッションは、経営を通じてどのようなことを実現したいのかを伝えるときに使われます。つまり、企業がどのような対象にフォーカスして価値を提供していくのか、対象に対してどのように貢献するのかといったことを具体化したものがミッションなのです。
「ビジョン」は、企業のあるべき姿のことをいいます。あるべき姿は、「そうでありたい」という理想の姿とも言い換えられます。企業の目標や方向性を明文化したものがミッションであり、これを前提として企業経営者や従業員が目指す理想象を描くという役割を果たすものがビジョンです。「バリュー」とは、MVVを作成した企業が最重要視している価値観のことを指しています。企業の魂、信条ともいえます。なかでも「コアバリュー」といった場合は、会社組織を構成する全メンバーが必ず共有する価値観のことで、コアバリューの明確化は結束力を高めることにもつながります。
一方、クレドはMVVにおける「ミッション」「ビジョン」を支える価値観としての役割を果たし、これらを実現するための指針となるものです。そのため、クレドと「バリュー」は似た面があるといえるでしょう。
クレドが求められる背景
クレドが求められるようになった背景としては、企業不祥事が多く発生するようになったことがあげられます。2000年代には、数々の企業で不祥事が発生します。特に大きな不祥事は、エンロン社によるものです。また、2002年にもワールドコム社の不祥事があり、これが原因となって経営破綻しています。日本においても、金融関係の不祥事や食品偽装などが問題になったことは、記憶に新しいでしょう。
この流れを受け、日本では各種金融関連法を統合する形で金融商品取引法が制定され、公益通報者保護法なども整備されました。これらの法律により、企業は内部統制を行うことが義務付けられ、クレドの重要性に着目されるようになったのです。
クレド導入のメリット
クレドの導入による効果についてもしっかり理解しておくことが必要です。クレドの導入には、いくつかのメリットがあります。ここでは、主なメリットについて説明します。
社員のモチベーションアップ
1つ目は、社員のモチベーションが向上することです。社員が意欲を持って仕事に取り組むようになれば、経営効率があがり業績が良くなることにつながります。そのため、多くの企業では社員のモチベーション向上にも多大な努力をはらっている状況です。このモチベーション向上にクレドの導入が役立つのであれば、すぐにでも導入したくなるでしょう。クレドを導入することによって、社員に対してより明確な行動基準を示すことができるようになります。それによって、各従業員は自らの判断で自信を持って業務に取り組めるようになるのです。受け身ではなく能動的な判断で主体的に仕事ができることは、モチベーション向上にも役立つと期待できます。
社員の意識変革によるコンプライアンス遵守
2つ目は、コンプライアンス遵守が実現できることです。クレドを導入することより具体的な業務遂行の指針が持てるようになると、社員の意識変革が起こるようになります。クレドが求める行動指針は、たとえば「顧客の役に立つには、具体的にどうアプローチすればよいか」などがわかるようになっています。そのため、クレドに沿って業務を進めていけば、仕事に対する誇りと自信が得られるようになるのです。
また、クレドに反する行動をしなければ、自然とコンプライアンスを遵守することにもつながります。クレドには、コンプライアンスに反することが記されることはないからです。そのため、クレドはコンプライアンス遵守を実現する目的で導入されることもあります。クレドが注目され始めた背景は、企業の不祥事が多発したことでした。クレドの導入は、コンプライアンス強化に大きな効果を生むと期待できるでしょう。
企業にマッチした人材育成
3つ目は、それぞれの企業に適した人材育成につながることです。クレドは、各企業が日々取り組んでいる業務につながるような具体的な内容で構成されています。つまり、クレドの内容は、その企業内で業務を行ううえでのオリジナリティがある行動指針なのです。当然、具体的な行動指針は、それぞれの企業によって異なってくることが多いでしょう。クレドを導入することによって行動指針が社員に浸透すれば、企業の価値観を会社と従業員で共有することが可能になるのです。
価値観を共有できれば、従業員が日々の業務において進め方に迷ったときに、自ら判断を下して前に進めていくことができるようになります。つまり、クレドの導入が日々の人材育成にもなるということです。クレドを導入すれば、企業が求める行動に関する判断軸に沿って行動ができる人材の育成を、自然に行っていくことができるようになります。
クレドの活用事例
クレドが導入企業においてどのように活用されているかについても認識しておく必要があるでしょう。そこで、楽天、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ニチレイにおける活用事例について紹介します。
楽天
まず、楽天におけるクレド活用事例です。楽天は、日本有数のインターネット通販事業などを展開しています。楽天においては、クレドを「成功コンセプト」として位置づけ、従業員と共有する形をとっている点が特徴です。具体的な内容としては、「常に改善、常に前進」「Professionalismの徹底」「仮説→実行→検証→仕組化」「顧客満足の最大化」「スピード!スピード!スピード!」といったものがあげられます。いずれもシンプルで覚えやすいものであり、社員が理解しやすいように配慮して作られています。
各従業員はプロフェッショナル集団に属していることを認識し、自身もプロフェッショナルの一員としての自覚を持って業務を遂行するようになることが、クレドを共有する狙いです。また、業務の過程で顧客満足度最大化の実現を意識して業務遂行にあたるようになることも、期待されています。
参考:
楽天主義 – 楽天グループ株式会社
ジョンソン・エンド・ジョンソン
続いての事例は、ジョンソン・エンド・ジョンソンです。紹介したとおり、クレド発祥元として有名な企業で、「我が信条(Our Credo)」としてクレドを導入しています。「我が信条」では、第一の責任は顧客に、第二の責任は全社員に、第三の責任は地域社会に、として、最後の責任は会社の株主であると宣言しています。
また、ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドの特徴は、誰を対象としてどのように考えるべきかがわかりやすく記載されていることです。この会社の企業文化は、企業利益や株主配当などが第一優先ではなく、あくまでも顧客が最優先とされており、クレドではその点を従業員がわかるように具体的に記載されています。
参考:
我が信条(Our Credo) – ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
ニチレイ
最後の事例は、冷凍食品を手掛ける食品関連商品の会社として有名なニチレイです。以前から、会社の幅広い関係先であるステークホルダーに対して自社の責任や社会貢献などを行動指針として示していました。ニチレイは、さらにクレドに象徴されるミッションやビジョンによって、企業としての行動指針を具体的に示したのです。
ミッションは「くらしを見つめ、人々に心の満足を提供する」としています。また、ビジョンは「私たちは地球の恵みを活かしたものづくりと、卓越した物流サービスを通じて、豊かな食生活と健康を支えつづけます」です。具体的な行動指針について、数は少ないですが、それぞれ端的に身近なフレーズで示しています。
参考:
ニチレイグループ 統合レポート 2024 – 株式会社ニチレイ
クレドの目的や意義を理解して働こう
クレドの基本的な知識やメリット、導入にあたっての注意点などを紹介してきました。クレドは、全従業員との価値観と行動指針の共有に役立ちます。価値観の共有ができ、具体的な行動指針があれば、従業員の日々の業務が企業の成長に直結するようになるでしょう。また、従業員の成長にもつながります。クレドの意味を十分に理解して行動をしていくことが重要です。
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