人財ポートフォリオの最適化に向けたタレントマネジメントシステム導入
※記事の内容は、取材当時(2025年3月)のものです
課題
- 人財情報が人事基幹システムに保有されていても、可視化のしくみが不足しており、現状把握が困難だった
- 人事異動業務が表計算ツールと紙資料に依存しており、多くの時間と労力が必要だった
- 育成の観点での行員自身や上司のマネジメント支援が不十分だと感じていた
解決策
- 「COMPANY Talent Management」シリーズに人財情報を一元化
- 「シミュレーション」機能の活用により、人事異動業務の効率化
- 「プロフェッショナルCDP」「ファンダメンタルCDP」機能の活用により、育成やスキルに関するデータを集約・可視化
期待する効果
- 一元化したデータを活用し、現状把握・戦略人事に必要な情報を可視化
- 戦略的な異動案の作成・配置検討を実現
- 自発的なスキルアップを促し、プロフェッショナル人財を強化
山形銀行は2024年4月より第21次長期経営計画「Pro-Act」をスタートさせ「お客さまの価値を共に創造し、地域ポテンシャルを最大化する金融・産業参画型ハイブリッドカンパニー」という長期ビジョンの実現に向け取り組んでいます。本計画には、重点戦略として、人口減少や価値観の多様化、地域企業が抱える課題の複雑化に対応するための「人財」に関する戦略を設けています。さらに「大切にしたい価値観」のひとつに「Well-being」を掲げ、「『挑戦する企業文化』を育み、すべての役職員の“ウェルビーイング”を向上させる」ことを目指しています。
山形銀行のこうした施策を支える基盤として導入されたのが、タレントマネジメントシステム「COMPANY Talent Management」シリーズ(旧製品名CYDAS)。2025年4月に人事部門で運用が開始し、創立130周年を迎える2026年4月の全行での本格稼働を目指して準備を進めています。
今回は、システムの導入・運用の推進を担当されている鈴木氏にお話を伺いました。
「人財ポートフォリオの最適化」のために必要だった現状把握
ー タレントマネジメントシステムの導入の背景を教えてください。
近年、“人的資本経営”という言葉が急速に注目されるようになり、当行でも長期経営計画の中で「人財ポートフォリオの最適化」を人的資本経営実現のための戦略として掲げ、その重要性について経営層や人事部門で議論を重ねてきました。その中でまず必要だと判断したのが、現状把握です。
以前の人事基幹システムでは、人事が必要とする情報を保有はしていても、可視化するしくみが不足していました。
そこで、2023年3月頃より本格的な情報収集を行うことになりました。業務効率化を図りつつ、行員の基本情報、スキル、能力、キャリア志向などを一元管理できるタレントマネジメントシステムの導入を検討し始めました。
ー 導入するシステムにおいて重視したポイントは何ですか?
各製品に長所と課題がある中で、重視したのは、柔軟性とサポート体制です。
たとえば、項目設計における自由度が高いことや、既存の表形式のデータを提供すれば加工してインポートしてもらえる対応力。こうした点が、当行にとっては非常に魅力的でした。
また、人財ポートフォリオの構築に関しても「何から着手すべきかわからない」というフェーズから一緒に考えてロードマップを描いてくれる存在であることも重要でした。
検討時には、経営層から「導入して終わりでは意味がない。継続的に活用できることが重要」と強く言われていたため、その点でも「COMPANY Talent Management」シリーズは最も“使うイメージ”が持てた製品であり、選定の決め手となりました。
導入後も経営企画部と連携しながら人財データの活用に向けた定例ミーティングを続けており、プロジェクトは着実に前進しています。
このプロジェクトは私が主担当として全体をリードし、周囲のメンバーと連携して進めています。プロジェクトを進めるにあたっては、タレントマネジメントシステムの運用に専任で携わる“人”を置くことも重要だと思います。
プロフェッショナル人財の育成と最適配置で継続的に企業価値を向上
ー 現在推進されている人事施策について教えてください。
山形銀行では、「人的資本経営の実践」という視点からさまざまな人事施策を進めています。お客様の課題は多様化し、銀行業務もより高度化しています。また、採用環境が厳しい今の状況だからこそ、既存の人財の強みや性格、価値観などの特性を深く理解し、育成や最適配置を通じて人財ポートフォリオの最適化を図り、限られたリソースでの生産性向上を目指しています。
近年では、専門性の高い領域に対応できる人財を育成するために、他行への出向や外部研修などにも積極的に取り組んでいます。また、グループ内の人財交流によりノウハウの流動性を高めています。
加えて、行内にはICTコンサルティングの専門チームを新たに立ち上げ、育成と実践を両輪で回す仕組みづくりを進めています。
今後は「COMPANY Talent Management」シリーズの「プロフェッショナルCDP」を活用して、行員一人ひとりに最適化した育成を実現したいと考えています。これまでも行員の強みや弱みの把握はできていましたが、弱みに対して「どのようなアクションを取るべきか」というのは本人やそれぞれの上司任せになってしまうことが課題でした。
「プロフェッショナルCDP」では、行員一人ひとりに適した学習内容を自動で提示できるため、自発的にスキルアップへとつながる導線をつくることが可能になります。一人ひとりの能力開発に寄り添うことで、組織全体の専門性と価値を高めていきたいと考えています。
当行の人事異動業務では、表計算ツールと紙の資料を使った運用をしており、多くの時間と労力が必要です。その作業を改善できると期待しているのが「COMPANY Talent Management」シリーズの「シミュレーション」機能です。
事前に候補者を検索し、異動案をドラッグ&ドロップで作成できるだけでなく、定員数の管理やスキルバランスの可視化により、柔軟かつ戦略的な人財配置が可能になります。これまでは「感覚」や「紙ベース」でしか把握できなかった行員一人ひとりの特性や傾向が、システム上にデータとして蓄積されますし、そうしたデータを分析することで再現性を伴った育成・配置が可能になります。
当行の運用実態に合致した、期待値の高い機能だと感じており、人事異動業務の効率化や精度向上の面で期待しています。
マネジメントを支援するツールとしても活用
さらに現在は、行内インフラのリニューアルを控えており、新しい環境下では利便性も向上する見込みです。それにより、行員がさまざまな情報にアクセスしやすくなり、自律的にキャリアを考える機会にもつながると考えています。
また、すべての行員の“ウェルビーイング”向上のために、エンゲージメントスコアを意識した取り組みにも力を入れています。エンゲージメントサーベイを数年にわたり継続する中で、「上司との関係性」が仕事へのやりがいや満足度に強く影響することが数値データからも明らかになってきました。
人事部門としては現場のマネジメント支援も重要な役割のひとつですが、実際には各上司に一任されているケースが多く、部下への支援の質にばらつきが出てしまっているのが実情です。今後は、1on1ミーティングの実施状況などをシステム上で可視化するなど、上司のマネジメントを支援するツールとしても活用できるようにしていきたいと考えています。
ー 最後に、今後サイダスに期待することを教えてください。
今回のシステム導入の主目的は「人財ポートフォリオの最適化」にあります。
その実現に向けて、コンサルティングや設定支援など、伴走型での支援を引き続き期待しています。
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