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2019.9.30

勤怠管理は使用者の義務!基礎知識と実施方法

従業員の長時間労働や過労死、企業の残業手当の未払いなどが、しばしば社会問題となっています。このような不祥事を起こした企業は社会的信用を失い、企業イメージが大きく低下してしまうでしょう。健全な経営を行うためには、適正な勤怠管理が欠かせません。ここでは、勤怠管理を正しく行うために必要な基礎知識や実施方法、システムなどについて解説していきます。

勤怠に関する用語!出勤・退勤・出社・退社の意味とは?

勤怠管理を適正に行うためには、用語を正しく理解する必要があります。「出社・出勤」「退社・退勤」などは基本的な用語ですが、意味が似ているため、特に区別せずに使っているという人も多いのではないでしょうか。混乱を避けるためにも、それぞれの用語の意味の違いを知って正確に使い分けるようにしましょう。
出社とは自分が勤めている会社に出ることで、出社時間は職場に到着した時間のことです。ただし、会社ではない場所で仕事をするときは別の言い方になることがあります。たとえば、官公庁に勤めている人が職場に行くときは登庁です。研究所に行くときは出所を使います。退社は職場から出ることで、退社時間とは職場を出た時間のことです。つまり、出社や退社は、業務の開始や終了を指す言葉ではありません。業務を始めることを表す言葉は出勤で、出勤時間とは業務を始めた時間のことです。業務を終えることは退勤で、終えた時間を退勤時間といいます。

勤怠管理とは?使用者の責任・義務

労働基準法では、従業員の勤怠管理をすることは使用者の責任であり義務でもあると定められています。勤怠管理とは、簡単に説明すると、従業員ひとりひとりの労働時間や休憩時間、休日や欠勤の状況といった就労実態を把握して管理することです。また、記録した勤怠データは従業員が退職してもすぐに廃棄することはできません。労働基準法によって、従業員が退職した月の締め日から起算して3年間保管しておくことが義務付けられています。
勤怠管理を行うのは、労働時間に対する給与の支払いを過不足なく行うためだけではありません。従業員の労働時間は適切か、恒常的に休日出勤を行うような環境になっていないかなど、状況を分析して職場の問題を見つけるためにも必要です。もちろん、問題がみつかった場合は、速やかに改善に努めなければなりません。

勤怠管理を行う必要がある事業所

厚生労働省では、労働基準法による労働時間の規定が適用される事業所は、従業員の勤怠管理を行うべきであるとしています。中には、労働基準法の労働時間規定が適用されない業種もありますが、多くはありません。適用されない業種には、天候などの自然の状態に仕事の時間が左右される農作業や水産業などがあります。つまり、従業員を雇うほとんどの事業所において勤怠管理を行う義務があると考えて良いでしょう。これは、個人経営でも法人経営でも変わりません。
なお、農漁業であっても労働者を雇って加工や販売などにも取り組む場合は、労働時間などの規定が適用される場合があります。たとえば、常時10人以上の労働者を雇用しているところであれば適用の対象です。始業・終業の時刻や休憩時間などの就業規則を定めなければいけません。

勤怠管理の対象となる労働者とは?

厚生労働省のガイドラインによると、勤怠管理を行う義務がある事業所とは「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る)を除くすべての労働者」と定められています。つまり、使用者は、労働基準法第41条に定める者とみなし労働時間制で働いている者以外のすべての従業員の勤怠管理を行う必要があるのです。
労働基準法第41条に定める者とは、次の条件のいずれかに当てはまる人を指します。

  • 農産・水産業に従事する者
  • 管理・監督の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
  • 監視または断続的労働に従事する者で、行政官庁の許可を受けた者

監視労働とは、監視を主な業務とし、かつ身体的・精神的緊張の少ない労働のことです。これは、守衛などの仕事が該当するでしょう。駐車場の監視員などのように、監視を主な業務としていても精神的緊張の大きい仕事は当てはまりません。断続的労働とは、断続的にしか作業を行わない仕事のことです。たとえば、学校の用務員や団地の管理人などが当てはまるでしょう。
また、みなし労働時間制とは、あらかじめ会社が1日の労働時間を定め、実際に働いた時間に関わらずその時間だけ働いたとみなす仕組みのことです。これは、使用者の指揮監督ができない場所で従業員が業務を行い、正確な労働時間を算出することが困難な場合に適用されます。

勤怠管理を行う目的は何か?使用者の義務

企業が勤怠管理を行う目的は、主に「従業員の労働時間の把握」「正確な賃金の計算」「従業員の健康管理」の3つが挙げられます。もっともわかりやすいのは、従業員の労働時間を把握することでしょう。勤怠管理では出勤時間から退勤時間まで記録しますので、超過労働になっていないか、有給は消化されているかなど、就労実態の確認ができます。
使用者は、労働者の労働に対して給与を支払わなければなりません。ミスなく正確に給与を計算するためには、労働時間を正確に把握することが不可欠です。時間外労働や休日出勤に関しても適切な方法で賃金を算出して、正しい額を支払う必要があります。また、従業員の健康を管理することは使用者の責務の1つです。勤怠状況を把握することで、従業員が身体や精神の健康を害するような働き方をしないように努めることができます。従業員が心身ともに健全であれば、業務の効率化や生産性の向上も期待できるでしょう。企業が負担する医療費の増大を防ぐこともできます。

勤怠管理を行う必要がある理由

どうして、企業は従業員の勤怠管理を行わなければならないのでしょうか。これは、企業コンプライアンスという観点から考えることができます。コンプライアンスとは「法令遵守」という意味です。つまり、企業コンプライアンスとは企業が決まりを守って業務を行うという意味になります。直訳では法令遵守ですが、通常は法令だけでなく就業規則や社内規定、さらに一般的な社会的規範も遵守すべき対象です。法令違反を犯した企業はイメージが低下し、社会的信用を失います。労使トラブルが起こったり、場合によっては倒産したりすることもあるでしょう。企業コンプライアンスを徹底し、企業の健全化を図ることが大切です。
また、勤怠データは、長時間労働などの労働環境の問題点を是正するために不可欠な情報です。勤怠管理をすることで就労実態が正確かつ具体的に把握でき、どこをどのように改善すれば良いかが見えてくるでしょう。たとえば、特定の従業員のみ極端に残業が多い場合は仕事量が偏っている可能性が考えらます。担当している仕事の内容を見直すなど、対策が必要です。
政府によって働き方改革が推進されていることは、多くの人が知っているでしょう。「時間外労働の上限規制」や「テレワークの導入」といった働き方改革を実践するためには、従業員の勤怠管理を徹底することが必要です。なお、テレワークを導入する場合は従来の勤怠管理の方法では対応できないことがあります。そのときは、ITツールを導入するなど管理方法の見直しが必要になるでしょう。

勤怠管理で把握する必要のある事項

勤怠管理ではどのような事項を把握すべきか、具体的に見ていきましょう。基本となるのは労働時間です。これは、出勤・退勤の時刻と休憩時間を記録することで把握できます。時間外労働や深夜労働、休日労働なども正確に記録しておくことが必要です。休日が正しく取れているか、申請や取得漏れがないかなどを確認する必要があります。法定休日のほか、会社が定める所定休日や振替休日、休日出勤をした際の代休などさまざまな種類がありますので注意しましょう。
有給休暇が正しく付与されているか、何日分を取得しているか、残日数はいくらかといったことも把握する必要があります。有給休暇を従業員に付与することは企業の義務です。雇用の日から6カ月間継続して勤務し、さらにすべての労働日のうち8割以上出勤した従業員には、10日間の有給休暇を与えなければなりません。なお、働き方改革関連法により、2019年4月1日から年に5日以上の有給休暇を取得させることが義務化されています。

勤怠管理を行う方法とツール

厚生労働省のガイドラインには、始業・終業時刻の確認・記録の方法として「使用者が、自ら現認することにより確認し記録する」もしくは「客観的な記録を基礎として確認し記録する」の2つが規定されています。使用者はいずれかの方法で勤怠管理をしなければなりません。現実的には、後者の方法で行うことになります。
よく使われているのは、タイムカードによる管理でしょう。これは、専用の機械にカードを差して時刻を打刻するという方法です。簡単でわかりやすい方法ですが、従業員が多い会社ではカードを保管する場所の確保が難しいことがあります。タイムカードに打刻した時間は、Excelに入力して集計することが多いです。紙の出勤簿による勤怠管理もよく見られます。一般的な形式は、従業員自らが出勤・退勤の時刻や時間外労働数などを記入し上司などに承認印をもらうというものです。自己申告となるため、不正をせず適切に記録するよう指導することが必要でしょう。
ICカードを使った勤怠管理システムもあります。これは、専用のカードリーダーに読み込ませることで出勤・退勤の時刻を打刻するというものです。パソコンを使った勤怠管理システムは多くの従業員を効率的に管理できて便利ですが、パソコンを用意する必要があります。テレワークなどの従業員が出社しない働き方を採用している企業では、勤怠管理ができるスマートフォンアプリを使用していることが多いです。

勤怠管理システムとは?種類と特徴を紹介

勤怠管理システムには、クラウド型とソフト型(パッケージ型)の2種類があります。このうち、主流となっているのはクラウド型です。クラウド型の勤怠管理システムがあれば、従業員はいつでもどこからでもパソコンやタブレット、スマートフォンなどさまざまなデバイスを使って打刻できます。そのため、営業担当の社員が出先から打刻する、在宅勤務者が自宅で活用するといったことが可能です。多くは初期導入費用がかからず、従業員ひとりあたりのひと月の費用が数百円程度であるなど、低コストで運用できます。
ソフト型(パッケージ型)は、パソコンにインストールして使います。データをサーバーにアップロードすることがないため、情報漏洩のリスクが軽減される点がメリットでしょう。ただし、バージョンアップの際には買い替えが必要となります。

勤怠管理システムを導入するメリット

タイムカードやExcel、出勤簿といった従来の管理方法では、内容の確認や集計に時間がかかります。また、遅れそうな人の代わりに別の人がタイムカードを打刻する、出勤簿に労働時間を水増しして記入するなど、不正が行われる可能性も否定できないでしょう。さらに、集計の際にミスをしてしまう恐れもあります。一方、勤怠管理システムはすべての従業員の勤怠が自動で集計・管理でき、入力ミスが起こる心配もありません。休日出勤をした際の割増賃金など、複雑な給与計算も自動で行われます。
勤怠管理システムをうまく活用すれば、従来の方法でかかっていた人件費や時間がカットでき、業務効率の向上が図れるでしょう。また、数値が自動的に入力されるため、打刻時間の改ざんといった不正が起きる恐れもほとんどありません。クラウド型のシステムであればいつでもどこからでも入力できるのも大きなメリットです。たとえば、営業社員が直行直帰するときも対応できますし、出張先で打刻することもできます。テレワークをしている社員の管理もスムーズです。

勤怠管理システムを導入するためのポイント

勤怠管理システムの導入には、さまざまなメリットがあります。しかし、十分な準備をしないままで導入しては、混乱を招く元となるでしょう。勤怠管理システムは、導入すればすぐに使えるわけではありません。通常、所定の労働時間や割増賃金の算出方法などさまざまな設定を入力する必要があります。そのため、まずは法律や社内の実態に即したルールを定めることが大切です。
勤怠管理システムは非常に多くのサービスが存在し、それぞれ利用可能な機能が異なります。たとえば、打刻可能なデバイスがパソコンのみのサービスもあれば、マルチデバイスに対応しているサービスもあります。出退勤管理や集計管理のみできるシンプルなサービスもあれば、休暇や残業などの各種申請・管理ができるもの、残業時間が超過しそうなときに通知があるものなど機能が充実しているサービスもあるのです。どのような機能が必要かは、企業によって異なるでしょう。そこで、最初に勤怠管理システムに何を求めるかを明確にし、合っているサービスを選ぶことが大切です。
使いやすいかどうかも大きなポイントです。必要な機能を満たしているサービスでも、従業員が使いづらいと感じるようではうまくいかない可能性があります。サービスのなかにはトライアル期間を設けているものもありますので、本格導入の前に試行してみると良いでしょう。会社の全部門で同時にスタートするのではなく、一部の部署から展開するのも1つの方法です。

勤怠管理において使用者が注意すべき点

正社員だけでなく契約社員やアルバイト、パートなどさまざまな雇用形態の従業員がいる場合は、勤怠管理において注意が必要です。特に、扶養控除の範囲内で働くことを希望しているアルバイトやパートがいるのであれば、労働時間や給与金額について気を配る必要があるでしょう。扶養控除から外れないように計算して働いていたとしても、急な残業が入るなどして調整が必要になることがあるものです。管理者として、労働時間をきちんと把握しておくようにすると良いでしょう。
また、フレックスタイム制や在宅勤務といった柔軟な働き方を導入している企業は、さまざまな勤務形態に対応できるシステムを採用する必要があります。たとえば、在宅勤務者は出社しませんので、会社にタイムレコーダーがあっても出勤や退勤の時間を打刻することはできません。パソコンやスマートフォンなどを使って打刻できるシステムがあれば、スムーズに管理できるでしょう。

適正な勤怠管理で働きやすい環境を作ろう!

従業員の勤怠管理を行うことは、労働基準法で定められた使用者の責任であり、義務でもあります。勤怠データは、給与の計算をするためだけでなく、労働状況を把握するためにも必要なものです。きちんと勤怠管理を行えば、労使トラブルを防ぐことができ、企業の健全化も望めるでしょう。また、政府が主導する働き方改革の推進にも欠かせません。
タイムカードや出勤簿といった従来の管理方法は手間やコストがかかり、入力ミスを起こす可能性もあります。勤怠管理システムであれば、自動で入力や集計を行うため手間やコストが省けます。導入すれば効率的に管理できるようになるでしょう。さまざまなサービスがありますので、企業に合ったものを選んで導入することが大切です。適正に勤怠管理を行い、働きやすい環境の構築を目指しましょう。

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