2024.3.28
人事評価とは?意味やメリット、よくある課題をわかりやすく解説
「人事評価」について、実はしっかりと理解できていないという方も多いのではないでしょうか?本記事では、人事評価の意味や目的、導入メリットについてご紹介します。
人事評価制度の設計方法や、人事評価システムについて詳しく知りたい方は関連記事をご覧ください。
人事評価制度の設計について知りたい方へ⇒人事評価に納得いかない!納得度の高い人事評価制度を作るポイント
人事評価システムについて知りたい方におすすめ⇒人事評価システムの導入目的やメリット・選び方を紹介
人事評価の書き方について知りたい方におすすめ⇒人事評価のコメントの書き方や目的とは?職種別の例文やコツを紹介
目次
人事評価とは

人事評価とは、一定期間内における従業員の成果や実績、業務に向き合う姿勢など、企業の基準に沿って評価を判断することを指します。組織を活性化し、従業員のモチベーションの維持・向上を図るためには、働きぶりを正当に評価できる人事評価を行うことが重要です。人事評価で出た結果は、従業員一人ひとりの昇格・昇進や報酬を決める際の指標として活用されるケースが一般的です。また、異動配置や人材育成の観点で活用されることもあります。
人事評価と一口に言っても、さまざまな種類や評価方法が存在します。近年では、「ノーレイティング」と呼ばれる新しい人事評価の方法が注目されています。どのような評価方法を導入するのかは企業によって異なるため、それぞれの特徴や違いを把握した上で、自社に合ったものを選定しましょう。人事評価の種類については後ほど詳しく解説します。
ノーレイティングについては、関連記事で詳しく紹介しています。
関連記事:新時代の評価制度!話題のノーレイティングの概要・メリットとは?
人事評価と人事考課の違いとは?
「人事評価」と混同しやすい言葉として、「人事考課」があります。結論から言うと、人事評価と人事考課はほぼ同じような意味合いで使われているため、一般的にはそれほど厳密に使い分ける必要はありません。厳密に区別する場合、人事評価と人事考課の違いは次のとおりです。
人事考課:主に従業員の能力や企業に対する貢献度を基準に、給与や昇進などを決定するためのもの
人事評価:必ずしも従業員の処遇に直結するとは限らず、人事異動や能力開発について検討する際の参考として用いられるもの
人事評価は人材育成や最適配置など、組織をさらに成長させていくために活用されるケースが多く、人事考課よりもより広い意味を持つと言えるでしょう。
人事考課について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
関連記事:人事考課で上手に目標設定を行うためのポイントと設定方法
人事評価の適切な段階数とは?
人事評価の段階数の設定は企業によって異なりますが、多くの企業では5段階評価を採用しています。しかし、実際は3段階評価になっているのが多くの企業における5段階評価の課題とされています。
5段階評価が一般的
人事評価で最も一般的とされている段階数は5段階です。5段階評価は、最高評価のSに次いでA・B・C・Dというようにアルファベットで評価するケースと、最高評価を5とし、続いて4・3・2・1と数字で設定されるケースがあります。
5段階評価は、Bや3を評価基準の標準に定め、それぞれの段階に評価点を割り振るのが基本です。たとえば、S(評価点:91点以上)・A(評価点:71点~90点)・B(評価点:51~70点)・C(評価点:31~50点)・D(評価点:30点以下)の5段階評価とした場合、評価点が71点の社員はBと評価され、評価点が90点の社員もBとなります。
5段階評価の課題|実質は3段階評価に
5段階評価の課題は、最上位と最下位の評価がほぼ「なし」に等しいことです。5段階評価を採用する企業は多いものの、実際は最上位と最下位の2段階を除く「A・B・C」あるいは「4・3・2」の3段階で評価されている場合が多いとされています。
なぜなら、日本人は最上位と最下位の評価を避け、平均的な評価をする傾向があるからです。社内で表彰されるなどの成果を出したり、企業イメージを低下させたりするなど、よほどの理由がない限り最上位や最下位がつくことはないでしょう。そのため、Bや3と評価される社員が最も多くなり、社員間の評価はほぼ横並びの状態にあります。
おすすめは4段階評価
5段階評価がうまく機能していない場合は、4段階評価の採用をおすすめします。4段階評価は5段階評価と異なり、真ん中を標準にするといった曖昧な評価基準になるのを防げます。その理由は、4・3・2・1の4段階評価とした場合、4は最上位、1は最下位となり、残る評価は3と2で、5段階評価であれば標準のBや3と評価された社員にも、優劣をつける必要が出てくるからです。
4段階評価であれば、前述した会議で積極的に発言する社員と何も発言せず参加するだけの社員に優劣をつけることができ、社員の積極性を考慮した公正な評価を行いやすくなります。また標準を基準とした評価方法でなくなるため、評価者は5段階で最上位と最下位をつけるよりも心理的なハードルが下がり、4と1の評価をつけやすくなるでしょう。
人事評価の目的

人事評価は、従業員のモチベーションやその後のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。最適な人事評価を運用できていない場合、中には「人事評価を行う意味はあるの?」と不満を抱える従業員が現れるかもしれません。
最適な人事評価を行うために、以下の人事評価の主な目的6つをしっかりと押さえましょう。
企業のビジョンや方針の明示
人事評価の目的の1つ目として、企業のビジョンや方向性を示すことが挙げられます。「企業としてどのような将来を描いているのか」「どのような人材を求めているのか」など、評価基準に企業のビジョンや方針を組み込むことで、従業員が企業の目標や方向性を理解しやすくなり、求める人物像にマッチした人材の育成にもつながります。評価基準にビジョンを組み込む際は、「業界No.1になる」などの曖昧な表現は避け、できるだけ具体的なビジョンや方針を落とし込みましょう。
従業員に期待する行動・役割の明示
人事評価の目的の一つとして、従業員に求める行動や役割を具体的に示すことが挙げられます。例えば、評価基準に「積極的に意見を発言することができる」という項目がある場合、企業として自主的な提案を行える人材を求めていることが伝わります。期待する行動を明確にすることで、公平な評価の実施につながるほか、従業員が間違った方向に頑張ることを阻止することができます。
人材育成の促進
評価結果を元に、最適な個別フィードバックを行うことで、従業員の能力向上や成長を促進する効果が期待できます。なぜなら、フィードバックにより、どのような行動や成果が会社に評価されるかがしっかりと伝わることで、自身の行動を省みる機会を与えることができるからです。
組織活性化・モチベーションの向上
公平な人事評価により、適切な処遇を決定することで、従業員モチベーションの向上や組織活性化を促す効果が期待できます。なぜなら、「企業や上司は自分のことをしっかり見てくれている」「自分の行動が企業の成長や成果につながっている」という実感が湧き、仕事のやりがいや企業への帰属意識を高めることができるからです。
反対に、フィードバック面談を疎かにしてしまうと、自身に下された評価結果に対して納得ができず、「不当な評価を受けた」「どうせ頑張っても評価されない」と思い込み、やる気を失ってしまう可能性もあります。評価を行うだけでなく、しっかりとフィードバックを行う時間や従業員の疑問を解決する時間を設けましょう。
人材配置の最適化
人事評価の結果をもとに、次世代リーダーにふさわしい従業員の発掘や育成、新たなプロジェクトやチームへの配置、特定の役割や職務に必要なスキルを持つ従業員の抽出などを行うことで、組織として最適な人材配置を実現することができます。実力のある従業員が見つかったら、適切な挑戦機会を与えたり、能力を最大限に活かすことができるポジションへの配置を検討すると良いでしょう。
また、人事評価の結果、チームの編成に偏りが生じている場合は、異動配置を検討してみるのも良いでしょう。特定の部署に偏りがあると、他部門やプロジェクトのパフォーマンスが低下する可能性があるからです。組織全体の効率や成果が向上するような、最適な人材配置を検討しましょう。
適材適所の人材配置を実現したい方には、こちらの記事もおすすめです。
公平な処遇・査定の決定
人事評価には、従業員の処遇や給与を決定する役割もあります。従来は、勤務年数や年齢により給与が決まる年功序列型が主流でしたが、近年では従業員のスキルや成果に応じて給与や処遇が決定されることが多くなってきています。「次のステップに進んだ場合、どのような処遇が与えられるのか」が明確になると、従業員の継続的な努力やスキルアップを促進する効果が期待できます。
人事評価の目的についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
関連記事:人事評価の目的とは|評価基準や人事評価制度の種類を紹介
人事評価のメリット

人事評価を行うメリットは、主に次の4つです。
【人事評価を行うメリット】
- 生産性が向上する
- 社内コミュニケーションが活発になる
- 従業員エンゲージメントが高まる
- 適材適所の人員配置を実現できる
それぞれ詳しく解説します。
生産性が向上する
人事評価によって、自身の成果を認められたり、改善点をフィードバックされることで、より効率的に業務に取り組みやすくなり、結果として生産性が向上する効果が期待できます。従業員一人ひとりの生産性が高まれば、チーム・組織全体の生産性も向上し、企業の成長にもつながります。
社内コミュニケーションが活発になる
評価結果を伝える際に1on1や面談を実施することが多いことから、人事評価には、上司と部下とのコミュニケーションを促進する効果があります。評価結果を共有し、フィードバックを受けることで、意見交換や改善のための議論が活発化し、組織全体のコミュニケーションが円滑になります。
また、最適なフィードバックにより、上司への信頼感が高まれば、部下は自分の悩みを打ち明けたり、疑問を解消しやすくなり、人事評価の時期だけでなく日頃からコミュニケーションを取りやすくなるでしょう。
従業員エンゲージメントが高まる
公平で納得感のある人事評価は、仕事のやりがいやモチベーション向上を促進し、従業員エンゲージメントの向上につながります。従業員一人ひとりのエンゲージメントが高まると、職場の雰囲気が明るくなり、組織の成長につながる新たなアイデアが生まれやすくなるでしょう。
また、近年は、SNSなどで従業員が働き方や会社の様子を発信することも増えてきています。エンゲージメントが高い従業員がポジティブな発信を継続することで、新たな優秀人材や企業が求める人物像にマッチした人材の採用・確保につながる効果も期待できます。
適材適所の人員配置を実現できる
人事評価によって、従業員一人ひとりの能力や適性が客観的に把握できるようになると、適材適所の人員配置が行いやすくなります。最適な人材配置は、組織全体の生産性向上や成長につながります。また、適切な業務やポジションに配置された従業員は、より自身の能力を発揮しやすくなり、やりがいや貢献実感を得やすくなるでしょう。
人事評価の種類

人事評価の手法には、MBO(目標管理制度)やOKR、コンピテンシー評価、360度評価などさまざま種類があります。組織の目的や文化、業界の特性に応じて適切なものを選択し、組み合わせることで、より効果的な評価を行えます。
自社に最適な評価手法を選択するために、それぞれの手法の特徴をしっかり理解しましょう。
MBO
MBO(Management by Objectives)は、日本語で「目標管理制度」と呼ばれる評価方法で、従業員の個人目標を明確に設定し、その目標に対する達成度を評価することでパフォーマンスを測定します。100%達成できそうな目標を設定することが特徴です。
MBOと似た評価方法として、「OKR」があります。MBOとOKRの違いについては、次の関連記事をご確認ください。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価は、従業員が持つ能力やスキルを評価する方法です。組織が求めるコンピテンシー(能力や資質)を明確に定義し、それに基づいて評価を行います。
コンピテンシー評価については、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:人材活用で自社改革を!コンピテンシー評価の概要から設計例まで解説
360度評価
360度評価は、上司だけでなく、部下、同僚など、さまざまな関係者が評価者となる方法です。複数の視点から評価を受けることで、より客観的な評価を得ることができることがメリットです。また、多角的なフィードバックをもらえることから、従業員の成長につながる改善点を見つけやすくなり、人材育成にも役立てることができます。
関連記事:【人事必見】360度評価とは?「意味ない」と言わせない導入ポイント
バリュー評価
バリュー評価とは、従業員が組織のミッションや価値観(バリュー)に沿った行動をどの程度実践できているのかを評価する手法です。バリュー評価は、組織のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)にマッチしていることから、組織文化や理念の浸透や、組織が求める人物像にマッチした人材を育成する目的で導入されることが多いのが特徴です。
人事評価の課題

人事評価は、組織の成長や従業員のパフォーマンス向上につながる一方で、評価の運用に時間がかかる、納得感のある評価を実現できないなど、さまざまな課題があります。人事評価のよくある課題について、それぞれ解説します。
新たな発想が生まれにくくなる
人事評価は、企業としてあらかじめ定めた評価基準に沿って実施されます。そのため、中には画期的な取り組みや新しいアイデアを実行した場合に、望ましい評価を受けられない可能性もあります。保守的な組織風土の場合、既存のやり方に沿った行動の方が重要視される傾向にあり、革新的な取り組みや新しい発想が生まれにくくなるかもしれません。
評価の運用に工数がかかる
人事評価の運用には、評価シートの作成や配布、従業員への提出催促、データ集計、評価後のフィードバック、アンケート調査など、人事評価の運用にはさまざまな工程があり、人事部門や管理者の負担が大きいことも課題の一つです。
評価されない業務のモチベーションが下がる可能性がある
最適な人事評価は、従業員のモチベーションを向上させる効果がありますが、反対に、評価されない業務に対するモチベーションを低下させる可能性もあります。また、売上に直結しやすい部門とそうではない部門で、評価結果に差が生じてしまい、組織に対する不信感につながったり、仕事のやりがいを失ってしまうケースも少なくありません。従業員一人ひとりをしっかりと評価できるような人事評価制度の構築を心がけましょう。
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納得感のある評価が実現できない
人事評価のプロセスが不透明であったり、評価基準が一貫していない場合、評価の公平性を担保できず、納得感のある評価を実現できません。「頑張っても適切に評価してもらえない」と不満が高まると、モチベーションの低下やエンゲージメントの低下につながります。
評価者のスキルが不十分
人事評価を行う管理者や評価者のスキルが不足していると、部下の評価や結果のフィードバックを適切に行えません。評価者のスキル不足が部下に伝わると、上司への信頼感を損なうだけでなく、「この会社は中間管理職が育っていない。この組織にいても成長できないのではないか」と自身の成長にも不安を覚え、最悪の場合、離職につながる可能性もあります。
人事評価を行う際は、「どのような基準で評価を行うのか」「最適なフィードバックを行うために意識すべきポイントは何か」など、評価者に対するフォローもしっかり行いましょう。
人事評価の概要をしっかり理解して、適切な評価を行おう
人事評価は、従業員のパフォーマンスや成果を評価し、適切なフィードバックや報酬を提供するための重要なプロセスです。公平で納得感のある人事評価を実現できれば、企業の求める人物像にマッチした人材の育成や、次世代を担う優秀人材の離職防止につながるほか、従業員一人ひとりの生産性の向上や、モチベーション向上につながります。
自社の人事評価制度がうまく機能していないとお悩みなら、タレントマネジメントシステムや人事評価システムの導入もおすすめです。
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