2025.6.24
レジリエンスとは?心理学やビジネスにおける意味・向上させる方法など詳しく解説
こんにちは!働きがいを応援するメディア「ピポラボ」を運営するサイダス編集部です。
近年、VUCA時代の到来により、ビジネスの現場で「レジリエンス(resilience)」が注目を集めています。企業でも、急速に変化する社会に対応できる組織への成長に繋がるキーワードとして、関心をお持ちの経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
VUCAの時代を生き抜く組織へと進化するためには、従業員一人ひとりのレジリエンスを高める必要があります。そのため、本記事では、レジリエンスが高い人の特徴を解説しつつ、高めるメリットや企業での高め方などをご紹介します。また、レジリエンスについてあまり詳しく理解できていない方のために、レジリエンスの意味や類似する用語との違いについても解説します。
組織や従業員の成長を促進したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

【ピポラボ 30秒で解説! | レジリエンスとは】
- 「レジリエンス(resilience)」は、「困難をしなやかに乗り越え回復する力(精神的回復力)」として、ビジネスの現場でも注目が集まっている。
- 「レジリエンス」という概念は、ハワイのカウアイ島で発達心理学者のエミー・E・ウェルナーが行った、困難な家庭環境で育った約700人の子どもたちへの追跡調査によって広く知られるように。
- レジリエンスが高い人の特徴として、「物事に対して柔軟な考えができる」「向上心がある」「自身の強みを把握できる」などが挙げられる。
目次
レジリエンスとは
「レジリエンス(resilience)」とは、日本語で「回復力」「復元力」「耐久力」「再起力」「弾力」などと訳され、「困難や逆境をしなやかに乗り越え、立ち直る力(精神的回復力)」を指します。近年では、ビジネスの現場でも注目されています。
日本語では「回復力」や「しなやかさ」と訳されることが多いですが、レジリエンスには「単なるストレスへの耐性ではなく、困難を糧にして成長する力」という意味も含まれています。
もともとこの言葉は、物理学の分野で物体が元の形に戻る「弾力性」や「復元力」を意味していました。しかし現在では、心理学・教育・ビジネスなど幅広い領域で使われており、人の心の回復力や適応能力を示す重要な概念となっています。
レジリエンスの心理学的な意味
心理学におけるレジリエンスは、ストレスやトラウマ、逆境、不幸などの困難に直面した際に、それを乗り越え、適応し、成長していく能力やプロセスを指す「精神的回復力」という意味で使われています。
「レジリエンス」という概念は、1955年、ハワイのカウアイ島で発達心理学者のエミー・E・ウェルナーが行った、貧困や家庭内暴力、親の精神疾患といった困難な家庭環境で育った約700人の子どもたちへの追跡調査によって、広く知られるようになりました。
また、同じトラウマ体験をしてもPTSD (心的外傷後ストレス障害)になる人とならない人の違いを説明する概念としても、レジリエンスは重要視されており、心の回復力のメカニズムを理解するうえで欠かせない視点となっています。
レジリエンスが注目されるようになった背景
ビジネスの現場でレジリエンスが注目されるようになった背景には、急激に変化する社会情勢や働き方の多様化があります。
ウクライナ情勢や為替の変動、環境問題、新型コロナウイルスの流行など、近年の社会や市場は予測不可能な状況が続いています。このような大きな変化の中で企業が成長を維持するには、柔軟に適応できる力=レジリエンスが不可欠です。
さらに、働き方改革やグローバル化によって仕事の多様化・複雑化が進み、ストレスの多い職場環境が広がる中、企業では「健康経営」への取り組みが進んでいます。これは、従業員の心身の健康を経営資源と位置づけ、積極的にサポートすることで、生産性や持続可能な成長に繋げる考え方です。
レジリエンスを高めることは、従業員のストレス耐性や精神的安定に寄与し、健康経営の推進にも直結します。
レジリエンスと類似する用語の違い
レジリエンスについて調べたり、自分のメンタルケアや周囲の人のサポートについて考えたりする際、「メンタルヘルス」「ストレス耐性」「ハーディネス」「ストレスコーピング」といった言葉を耳にすることがあると思います。
これらはレジリエンスと関連が深い言葉ですが、それぞれの意味や指し示す範囲は異なります。レジリエンスを正しく理解し、その力を効果的に高めていくためにも、これらの類似用語との違いをしっかりと把握しておきましょう。
・メンタルヘルス
・ストレス耐性
・ハーディネス
・ストレスコーピング
レジリエンスと「メンタルヘルス」の違い
メンタルヘルスとは、「心の健康状態」そのものを指す言葉です。強いストレスや精神的疲労などにより心の健康が損なわれると、うつ病やパニック障害などの精神疾患に陥る可能性もあります。近年では、従業員が健やかな精神状態で働けるよう、メンタルヘルス対策(心の健康管理や不調への対応・予防)に取り組む企業が増えています。
一方、レジリエンスは困難な状況に直面した際に「しなやかに適応し、回復・成長する力やプロセス」を指し、主に能力開発や予防の観点から語られます。
また、メンタルヘルスケアにおいては、不調の程度によって医療機関との連携が不可欠となる場合がありますが、レジリエンスの向上は、主に教育やトレーニングを通じて個人の能力を高めるアプローチが中心となります。
レジリエンスと「ストレス耐性」の違い
ストレス耐性とは、ストレスに直面した際に、個人が心理的・精神的にどれだけ耐えることができるかを示す言葉です。よく「ストレスを溜める器の大きさ」に例えられ、この器が大きい(ストレス耐性が高い)ほど、多くのストレスに対応できると考えられます。
レジリエンスとストレス耐性は密接に関連しますが、意味合いは異なります。ストレス耐性は、ストレス要因に対する「防御力」や「我慢強さ」に近い概念です。 一方、レジリエンスは、単にストレスに耐えるだけでなく、困難な状況から「回復する力」や、その経験を糧に「成長する力」までを含みます。
レジリエンスと「ハーディネス」の違い
ハーディネスとは、「ストレスフルな出来事に対して動じにくい、精神的な強靭さやタフさ」といった特性を指します。また、Commitment(関与)、Control(統制)、Challenge(挑戦)の3つのCで構成されると考えられています。
ハーディネスとレジリエンスは混同されやすいですが、ハーディネスは困難に直面しても「そもそも傷つきにくい、打たれ強い」という特性があります。 一方、レジリエンスは、困難によって一時的に落ち込んだり傷ついたりしても、そこから回復し、適応していく力を意味します。
レジリエンスと「ストレスコーピング」との違い
ストレスコーピングとは、「ストレスにうまく対処するための具体的な行動や考え方」を指します。「コーピング(coping)」には「対処する」「切り抜ける」といった意味があり、ストレス反応を低減するための技術や工夫のことです。
ストレスコーピングは、レジリエンスを発揮するための具体的な「手段」や「スキル」の一つといえます。たとえば、問題解決に焦点を当てる「問題焦点コーピング」や、気晴らしや考え方を変えることで感情を調整する「情動焦点コーピング」があります。
レジリエンスは、困難な状況を乗り越え、成長していくための総合的な「力」や「プロセス」を指すのに対し、ストレスコーピングはそのプロセスの中で活用される具体的な「対処法」を意味します。
関連記事:コーピングとは何か?ストレスへの対応力を高めて強い組織をつくろう!
https://www.ctm.works-hi.co.jp/peoplelabo/coping/
各分野におけるレジリエンスとは
レジリエンスは、物理学や心理学、ビジネス分野以外でも幅広い場面で使用されている用語です。ここでは、代表的な例を紹介します。
組織レジリエンス
組織レジリエンスとは、社会や環境変化によってもたらされるリスクに対する、企業や組織の適応力を示します。組織レジリエンスが高い組織には、さまざまな変化に適応する力が備わっているため、困難や脅威に直面したとしても乗り越えられる強さを持っています。
組織レジリエンスは、評価指標にもなり得る重要なものであり、組織の存在価値にも直結します。そのため、組織レジリエンスが低ければ、環境の変化に適応することができず、業績不振や経営破綻する恐れがあります。
環境レジリエンス
環境レジリエンスとは、さまざまな自然環境の変化に直面したとき、社会や組織にどれほどの復元力・適応能力があるのかを示します。
環境レジリエンスの中には、地球温暖化による環境変化に対する回復力・適応能力が重視される「気候変動レジリエンス」と、自然生態系の変化に対する回復力・適応能力を示す「生態学的レジリエンス」の2つの要素が含まれます。
災害レジリエンス
災害レジリエンスとは、地震や台風など災害による被害からしなやかに復興できる力を示します。
災害が起きると、電気や水道が供給できなくなったり、公共交通がストップしたりするなど、都市機能に大きなダメージを与えます。
災害レジリエンスは、そういったダメージを受けてもスピーディーに機能回復できるように備えておく考え方です。災害レジリエンスが高ければ、災害によってダメージを受けても日常生活に早く戻ることができます。
サイバーレジリエンス
サイバーレジリエンスとは、サイバー攻撃を100%防ぐのは不可能であることを前提に、攻撃を受けた後の回復力を示します。
近年、サイバー攻撃によって情報漏洩や不正アクセスなどの被害が拡大しているため、組織のリスク管理戦略として注目されています。
レジリエンスの因子と尺度
レジリエンスは、多様な要素が複雑に絡み合った概念です。そのため、レジリエンスの因子や尺度については、これまで多くの研究がなされています。ここでは、レジリエンスを構成すると考えられる主要な因子と、それを測定するための代表的な尺度についてご紹介します。
レジリエンスを構成する2つの因子
レジリエンスを理解するうえで、最初に知っておきたい「危険因子」と「保護因子」について解説します。
危険因子
危険因子とは、強いストレスや困難をもたらし、レジリエンスを阻害する要因です。具体的には、戦争や災害、貧困、精神疾患(うつ病・不安障害)、離婚、いじめ、虐待などが該当します。
保護因子
保護因子とは、強いストレスや困難に適応し、レジリエンスを高める要因です。
この因子には3つの側面があり、個人の性格や考え方などの先天的な要素(個人内因子)、困難に直面した際にサポートしてくれる家族や友人との関係性(環境因子)や、過去の経験から得たスキル・問題解決能力(能力因子)などが該当します。
なお、レジリエンスの本質とされている精神的回復力は、主に「個人内因子」の一部として位置づけられています。
精神的回復力を構成する要素
心理学者である小塩真司氏らの研究グループでは、レジリエンスに関わる個人内因子が「精神的回復力」であり、その力は3つの因子から構成されていると発表しています。
《精神的回復力を構成する因子》
- 新奇性追求
新奇性追求とは、新たな出来事や人などに興味・関心をもつことや、常識や習慣にとらわれず前向きにチャレンジする姿勢や行動などを指します。 - 感情調整
人はトラブルが発生したときや逆境に遭遇したとき、感情が大きく揺れ動きます。感情調整は、コントロールが難しいとされるネガティブな感情(怒りや悲しみなど)に飲み込まれず、適切に処理する力とポジティブな感情を意識的に活用する力の両方を含む能力のことです。
「悲しい」「嫌だ」「逃げたい」といったマイナス感情を自らコントロールできれば、困難に直面しても気持ちが下がり続けなくなるため、切り替えが早まり、チャンスを掴みやすくなります。 - 肯定的な未来志向
肯定的な未来志向とは、未来に対して期待感をもつことを意味します。ただし、「何とかなる」というような漠然とした考えではなく、常に明確な目標やビジョンをたてて、実現するための具体的なプランを描くことで、ストレスや逆境に遭遇しても緩和・回復していけます。
また、レジリエンスに関連した要素を「資質的レジリエンス要因(先天的に獲得しているもの)」と「獲得的レジリエンス要因(後天的に獲得されたもの)」の2つに分けた考え方も研究されています。
- 資質的レジリエンス要因(資質的要因)
生まれ持った気質と関連が強い要因で、「楽観性」「統御力」「社交性」「行動力」などを意味します。 - 獲得的レジリエンス要因(獲得的要因)
発達の中で身につけやすい要因で、「問題解決志向」「自己理解」「他者心理の理解」などを意味します。
レジリエンスを測定する主な尺度
レジリエンスは、世界共通の尺度、ルールなどがまだ定まっていません。現在も様々な機関で研究が行われているため、内容や能力の測り方に違いがあります。ここでは、4つの研究についてご紹介します。
レジリエンススケール
レジリエンススケールとは、「個人的コンピテンス(Personal Competence)」と「自己と人生の受容(Acceptance of Self and Life)」の2因子、全25項目からレジリエンス力を判断する尺度です。内的整合性、妥当性が高いため、様々な年代を対象に使用されています。
森敏昭氏らのレジリエンス尺度
森敏昭氏らの研究では、「I am因子:自分自身を受け入れる力」「I can因子:問題解決力」「I have因子:他者との信頼関係構築力」「I will/I do因子:成長力」の4因子、全29項目からレジリエンス力を測定しています。
精神的回復力尺度
精神的回復力尺度とは、「精神的回復力」を論じた小塩真司氏らが考案し、全21項目から精神的回復力を測定します。また、新奇性追求・感情調整・肯定的な未来志向(精神的回復力を構成する因子)に焦点を当てた得点化もできます。
二次元レジリエンス要因尺度
二次元レジリエンス要因尺度とは、資質的要因と獲得的要因を論じた平野真理氏らの研究グループが考案し、「資質的レジリエンス要因」と「獲得的レジリエンス要因」からレジリエンス力を測定する方法です。
この方法では、「Temperament and Character Inventory (TCI)」と呼ばれる、個人の気質、性格を分けて捉える尺度が用いられています。
レジリエンスが高い人の特徴
レジリエンスが高い人には、次のような特徴があります。
- 物事に対して柔軟な考えができる
- 向上心がある
- 自身の強みを把握できる
- 感情をコントロールできる
- リスクを恐れず挑戦できる
- 周囲と良好な関係を築ける
それぞれの内容について解説していきます。
物事に対して柔軟な考えができる
レジリエンスが高い人は、柔軟な思考力を身につけています。一つの考えに囚われることなく対応できるため、様々な逆境に立ち向かえます。
たとえば、企画案が通らないネガティブな状況に置かれたとき、レジリエンスが高い人なら「なぜ通らなかったのか」「どこをどのように改善すればよいのか」と、考えをポジティブに転換します。
また、柔軟性に長けているため、発想を転換するのが得意です。環境変化に強く、あらゆる困難もしなやかに乗り越えられます。
向上心がある
レジリエンスが高い人には、向上心があります。「自分に改善点はないか」「もっとできることはないか」といったように、前向きに取り組む姿勢が見られるのが特徴です。
業務を行う中で、失敗したりトラブルが発生したりすることは少なくありません。一度は落ち込んでも自分の改善点を熟考し、新たに目標を立てようとします。ポジティブな思考で成長を目指せるのは、レジリエンスが高いからこそできることです。
また、チームや部署で問題が起きたとき、レジリエンスが高い人は他人事にならず、自分事に捉える傾向にあります。他者のせいにするのではなく、自分なりに改善点を見つけようとするのです。
自身の強みを把握できる
人にはそれぞれ強みがあるものです。しかし、自身の強みをしっかり把握できている人は、そう多くありません。
レジリエンスが高い人は、自身の強みを把握しており、たとえ困難や脅威に直面しても強みを活かして活躍できます。そのため、環境変化が起きたときでもうまく対応できる人がほとんどです。
また、強みだけでなく弱みを受け入れられる点も挙げられます。弱みは見方を変えれば、強みになることもあります。自身の長所と短所、すべてを認めているのです。
感情をコントロールできる
感情をコントロールできることもレジリエンスが高い人の特徴です。嫌なことがあったとき、気分が落ち込んだままでは仕事の効率や成果に影響を及ぼします。
せっかくのチャンスが巡ってきてもネガティブな感情が尾を引くと、パフォーマンスが低下してしまい、周りからの評価を下げてしまう可能性があります。
一方で、レジリエンスが高い人はメンタルの回復が早いため、一時の感情に囚われることなく、仕事の本質と向き合おうとします。また、感情をうまくコントロールできるよう、自分なりのストレス対処法をもち合わせているのです。
リスクを恐れず挑戦できる
新しいことにチャレンジするときは、リスクを伴います。レジリエンスが高い人は、リスクを恐れず、むしろ自身が成長できるチャンスと捉え、ポジティブに挑戦する傾向があります。
たとえ失敗や問題に直面しても、「できない」「無理」と騒ぐのではなく、冷静に取り組むことができます。困難を乗り越えたときには、自身が成長できたと意識し、次への活力に繋がるでしょう。
また、仕事では様々な課題が発生します。レジリエンスが高い人は、目をそらさずに一つひとつの課題に向き合い、挑戦していこうとします。
周囲と良好な関係を築ける
レジリエンスが高い人は、周囲と良い関係を築けているため、誰かが困っているときは、自然と協力し合えます。実際、トラブルが発生したとき、周囲の助けを得て乗り越えられたという体験をもつ人も少なくないでしょう。
レジリエンスが高いと、コミュニケーション能力も高く、周囲と円滑な関係を築けるため、信頼を得やすい傾向にあります。
レジリエンスの妨げとなる考え方
レジリエンス(=困難を乗り越える力)を育むためには、“自分の思考パターン”に気付くことが大切です。ここからは、レジリエンスを妨げてしまう2つの思考パターンをご紹介します
- ABC理論
- A-C理論
ABC理論
ABC理論とは、出来事(Adversity)から認知・思考・解釈(Belief)が生じ、結果としての感情・行動・生理現象(Consequence)が引き起こされると考える理論です。最終的に生じる行動は、認知・思考・解釈が異なれば大きく変わります。つまり、同じ出来事でも解釈によって、受け取り方が変わるということです。
たとえば、上司から高すぎる目標を設定されたとします。このとき、「頑張れば達成できる目標なのかもしれない」とポジティブに受け取るか、「無理なのを承知でわざと設定された」とネガティブに受け取るかによって、その後の感情は変わります。
ポジティブに受け取れば、前向きな姿勢でチャレンジできるでしょう。逆に、ネガティブに受け取れば、精神的なダメージを受け、モチベーションの低下や仕事の効率を下げてしまいます。
A-C理論
A-C理論とは、出来事(Adversity)と感情(Consequence)の間に解釈 (Belief) が存在せず、出来事と感情が直結していると考える理論です。
ABC理論では、受け取り方を変えることで感情をコントロールすることができますが、A-C理論では、意識して自分の感情を変える要素がありません。出来事に対して自動的に特定の感情が湧き上がり、主体的に認知を介在させる余地が少ないため、思考の柔軟性が失われ、受け身の反応に陥りやすくなります。
企業におけるレジリエンス向上のメリット
企業にとってレジリエンスを向上させることは、単なるメンタルヘルスの話にとどまらず、組織全体の生産性や持続可能性の向上に直結するメリットがあります。そのメリットというのは、以下の4つになります。
- 社会環境の変化に適応しやすくなる
- 従業員の心身の健康を維持しやすくなる
- 従業員の目標達成力の向上に繋がる
- 企業の評価指標の一つになる
社会環境の変化に適応しやすくなる
社会情勢や市場などビジネス環境が目まぐるしく変化する時代において、企業が長期的に成長し続けていくためには、変化への適応やリスクへの備えが不可欠です。
困難な状況に直面したとしても、組織や従業員のレジリエンスが高ければ、様々な変化にも柔軟に対応できる企業となるでしょう。
従業員の心身の健康を維持しやすくなる
レジリエンスは、従業員の心身の健康を維持するための施策としても有効です。多くの企業では人材不足による業務の増加や、職場環境の変化などにより、ストレスを抱えて心身のバランスを崩す従業員が少なくありません。
また、日本人は自己肯定感(自らの価値や存在意義を評価できる感情)が低い傾向にあるため、失敗を引きずりやすく、ストレスを溜めやすいといわれています。精神的な疲れが溜まり、うつ病やパニック障害に陥れば、働ける状況ではなくなり離職に繋がります。
しかし、従業員一人ひとりのレジリエンスが高ければ、ストレス耐性・適応力・回復力が高まるため、心身の健康を維持しやすくなります。その結果、従業員の離職率が低下するため、優秀な人材の流出や人材不足などを防げます。
従業員の目標達成力の向上に繋がる
多くの企業にとって変革が求められている中、従業員に対しても失敗や責任などのプレッシャーに負けずにチャレンジする姿勢が求められます。レジリエンスが向上することにより、気持ちを切り替え、目標に向かって粘り強く取り組む力が養われます。
また、途中で諦めず、自分なりの方法で工夫しながら前進できるようになるため、業務の継続性や達成率の向上にも繋がります。
企業の評価指標の一つになる
企業として社会情勢やリスクに対応する能力がどのくらいあるのか、外部からの評価指標の一つとして、レジリエンスが重要視されています。
レジリエンスが高い企業は、変化への適応能力や耐性に優れているため、顧客や市場からの評価が上がります。その結果、企業のブランドイメージは高まり、競合企業との差別化や優秀な人材確保、長期的な利益が得られます。
また、レジリエンスを評価指標の一つとして重視する投資家は少なくないため、レジリエンスの向上は、投資家へのアピールにも有効です。企業がレジリエンスを高めることができれば、企業価値を示す根拠になります。
組織のレジリエンスを高める方法
企業は組織のレジリエンスを高めることで、様々なメリットが得られます。組織のレジリエンスを高めるためには、次のような取り組みが必要です。
- 従業員のレジリエンスを向上させる
- 心理的安全性の高い企業風土をつくる
- ミッションやビジョンを浸透させる
- BCP(事業継続計画)に取り組む
従業員のレジリエンスを向上させる
企業としてのレジリエンスを向上させるためには、まず従業員のレジリエンス向上が重要です。従業員のレジリエンスが強化されることで、企業としてのレジリエンスも高まります。
そのためには、企業としてレジリエンスの重要性を理解し、従業員一人ひとりにレジリエンスの理解を深める研修やセミナーを行うと効果的でしょう。たとえば、「ネガティブ思考からポジティブ思考に変換する習慣」「困難をバネにする回復力」「ストレスに負けない耐性」について取り上げることで、従業員一人ひとりのレジリエンスが高まり、結果として組織全体のレジリエンス向上に繋がります。
ただし、従業員に対するレジリエンスの研修は自己流では難しいものです。外部セミナーや教育プログラムを活用すると、より効果的なセミナーや研修を実施できます。
心理的安全性の高い企業風土をつくる
企業が社会環境や市場の変化に対応するには、新しい分野へのチャレンジが欠かせません。もし、失敗を許容しない組織文化だった場合、チェレンジに対して消極的な従業員が増えてしまいます。このような状況が続けば、大きなストレスを抱えてうつ病を起こしたり、離職率が高まったりする恐れがあります。
心理的安全性の高い職場は、チームの一人ひとりがチームに対して気兼ねなく発言でき、周囲を過度に気にせず挑戦・行動できる職場環境・雰囲気があります。そのため、企業は、失敗を報告しやすい企業風土をつくる努力が必要です。
失敗した後、責めるのではなく、「なぜ失敗が起きたのか」「失敗を次にどのように活かすのか」を一緒に考えられるようにしましょう。失敗を恐れない職場環境をつくれば、困難な課題に直面しても積極的にチャレンジする従業員が増えるため、企業の成長促進に繋がります。
ミッションやビジョンを浸透させる
企業のレジリエンスを高めるためには、自社のミッションやビジョンを明確にし、従業員の普段の行動レベルに根付かせることが重要です。ミッションとビジョンをしっかり社内共有できれば、企業と従業員の目指す方向が一致するため、従業員は迷わずに自信をもって行動できるようになります。
その結果、社会情勢や市場の変化にあわせて、企業が一丸となって柔軟に対応していく土台ができます。
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BCP(事業継続計画)に取り組む
企業がレジリエンスを高めるための具体的な手段として、BCP(事業継続計画)への取り組みが重要となります。BCPとは「Business Continuity Planning」の略称で、災害やサイバー攻撃などの緊急事態が生じたとき、損害を最小限に抑え、事業の復旧・継続を図ることを目的に作成されます。
BCPに取り組まないと、トラブルが生じたときにうまく対応できず、ダメージからの回復・復元が遅れてしまいます。事業を再開するのに時間がかかれば、業績が低迷したり企業としての信用を失ったりしまい兼ねません。このような状況を回避するためにも、緊急事態によってダメージを負った後の速やかな復旧力が重要です。
具体的な取り組みとしては、テレワーク環境でのサイバー攻撃に対する対策、自然災害発生時の初動対応から復旧までの計画書づくりと共有などが挙げられます。万が一に備え、事業を継続するための仕組みやガイドラインの整備が必要です。
組織のレジリエンスを高めるには働きがいのある環境作りが重要
社会情勢や事業環境が目まぐるしく変化し、様々な困難に遭遇する近年、これまでの常識が通用しない中でも、困難をしなやかに乗り越えられる高いレジリエンスが企業にも求められます。
組織のレジリエンスを高めるためには、従業員一人ひとりのレジリエンスを高める取り組みが必要です。従業員にとって働きがいのある職場環境が整っていれば、課題や困難が生じても、サポートし合いながらうまく適応できるでしょう。
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