“ユニークバンク”を実現するためのタレントマネジメント戦略
※ 記事の内容は取材当時(2025年1月)のものです。
岩手県に本店を構える北日本銀行は、2020年に10年ビジョン「豊かな人間力と創造的開発力で、未来をデザインする“ユニークバンク”」を制定し、人事制度改革に取り組んでいます。サイダスが地方銀行と一緒に新しい働き方を考える「地銀とプロジェクト」において、2023年にお話を伺った北日本銀行の皆様に、2年前からの変化をお伺いしました。「自律型人財」の育成に繋がるシステム活用事例や施策浸透のポイントをご紹介します。
システム導入の経緯については、こちらのサイトをご覧ください!
https://www.ctm.works-hi.co.jp/chiginto/kitanippon/
未来をデザインする「自律型人財」を育成
ー北日本銀行様が2020年4月に制定された10年ビジョンの概要を教えてください。
私たちが目指す「ユニークバンク」とは、「お客様に対して、わくわくするような価値や期待を提供できる銀行」です。ユニークという言葉は「面白い」というニュアンスでも使われますが、本来は「唯一無二の存在であり、他にはない」という意味です。「ユニークバンク」というビジョンには、銀行として個性的でユニークな戦略を打ち出すだけでなく、組織としての存在感を発揮し、地域社会の未来を共創していくという想いが込められています。
このビジョンを達成するためには、職位や年齢、性別などに関係なく誰でも声を上げることができ、それが経営に反映される良い循環が必要です。また、行員一人ひとりが共通認識を持ち、納得感を持って協働できる環境が欠かせません。そこで、人事部では10年ビジョンをよりシンプルで分かりやすい言葉で伝えるために、人事ビジョン「未来をザインする自律型人財とエンゲージメントの共創」を2021年に策定しました。

未来を自ら描く力を育む 「3つのプログラム」
ー「自律型人財」の育成に向けてどのような施策を展開していますか?
人事ビジョンにおける「自律型人財」とは、「自らの意思で仕事を作り出しキャリアを切り拓く人財」を意味します。これまでは人事部側が示すキャリアパスに準ずることが多かったですが、これからは自分で自身のキャリアを考えることが基本であり、それが「自律型人財」へ向かう第一歩となります。弊行では、「ユニークバンク」の実現および「自律型人財」の育成に向けて、3つの育成プログラムを実施しています。
1つ目は「キャリアデザイン」。ここでは、自己理解を深め、将来のありたい姿を明確にし、自分自身が納得できる成長目標を設定します。成長目標の達成を通じて、自分の未来、お客様の未来、そして北日本銀行の未来をデザインしていくプログラムです。
2つ目は「キャリアアドベンチャー」。ここでは、「自律」の前にまず必要な「自立」を促し、主に入行後3年間の能力開発の支援を目的としたジョブローテーションを実施しています。このプログラム中は、失敗を恐れずに業務にチャレンジし、レベルアップを図りながらどのようなキャリアを歩みたいかを探求します。
3つ目は「キャリアジャーニー」。入行後4年目以降の能力開発を目的としたプログラムで、旅を楽しむように様々な経験を積み重ねながら、自らの思い描くキャリアデザインを実現していくための取り組みです。
これらのプログラムを効果的に運用して行員一人ひとりのスキルアップを図るため、「COMPANY Talent Management」シリーズ(旧製品名:CYDAS)を活用して個々の成長を可視化し、支援する体制を整えています。
【 北日本銀行様の施策と活用している機能一覧 】

ー各育成プログラムでは、どのようなシステムを活用していますか?
「キャリアデザイン」プログラムでは、「1on1 Talk」機能を活用し、上司と部下との対話を継続的に記録・参照できる環境を整えています。行員一人ひとりがキャリアへの想いや価値観を持つには、心理的安全性が保たれていることが前提条件。そのため、頻度は職位によって異なりますが、パートタイム職員から管理職まで1on1を実施しています。

「キャリアアドベンチャー」プログラムでは、入行1年目から3年目の行員に対し、基礎的な銀行業務全般のスキル取得のために「ファンダメンタルCDP」機能を活用しています。スキルの習熟度合いに応じて、バッジが付与される仕掛けがあり、行員が面白さを感じながら積極的にスキル取得へ取り組める点がとても気に入っています。
システムを導入する前は、営業店ごとに表計算ツールで結果を入力・管理していたため、全体のジョブローテーションの状況が見えづらく、適切なローテーションができていないケースがありました。現在では、システムを通じて現場と人事双方がスキル習得状況を把握できるようになり、より適切なローテーションの計画・実行ができるようになりました。

「キャリアジャーニー」プログラムでは、個人コンサルティング、法人コンサルティング、専門デジタル分野の全4種類のスキルチェックや学習を促進するため、「プロフェッショナルCDP」機能を活用しています。この機能では、スキルチェックごとに設問数やレベルの設定をし、各分野において組織が求めるスキルを明示しています。
そのため行員は、自分が今後どのようなスキルを身につけていけばよいのかイメージしながら、日々の業務に取り組めます。スキルの習熟度については、自己評価と上司評価をレーダーチャートで可視化・比較できるため、上司との間にあるギャップに行員が自ら気づいて経験を積める点が便利だと思っています。
2024年からは「プロフェッショナルCDP」機能と「LMS(学習管理システム)」※他社製品 を連携し、個々のスキルチェックの結果から最適な学習動画がレコメンドされるしくみを構築しました。今後は、デジタル人財の育成にも注力したいため、この機能はさらに活用していきたいです。

「成長が見える」タレントマネジメントが変えた職場環境
ー「COMPANY Talent Management 」シリーズを活用することで、何か変化はありましたか?
はい。弊行では、「COMPANY Talent Management」シリーズを導入したことで次の4つの側面で変化がありました。
1. スキルチェックや自己申告によりデータが集約されたことで、今までよりも、スキルや特性、経験状況などを加味した戦略的な最適配置や育成に繋がりやすくなりました。
2.育成スケジュールや状況を可視化することで、行員の自発性が促されるだけではなく、状況が把握しやすくなり上司や先輩からフォローやサポートができる体制になりました。
3.各種エンゲージメントサーベイの結果やスキルチェックのデータ集計の効率化も進み、当初目的としていた、行員のエンゲージメントスコアの一元化や可視化が進みました。
4.新体制が整ったことにより、1on1ミーティングの実施率が約10%向上したり、「職場の誰かが自分の成長を促してくれる」というエンゲージメントスコアが高まったりと、改善が可視化されることで数値を意識し、さらなる改善に繋がりました。
システムを導入後、様々なデータが蓄積されてきたため、今後は、行員の希望の実現と銀行としてのパフォーマンス向上の両方を踏まえた最適配置を目指したいです。

システムに蓄積されたデータを活かし、 “ユニークバンク”の実現を目指す
ー10年ビジョンが目指す「ユニークバンク」の実現に向けて、今後取り組みたいことを教えてください。
①更なる業務効率化、②ビジョン実現に向けた人事KPIの可視化、③蓄積したデータを活用した最適配置 の3つを重点的に取り組んでいきたいです。
更なる業務効率化については、アナリティクス機能の活用による人員配置や登用、育成の人財抽出の効率を高めたいと考えています。また、各種制度変更などにより、人事部への問い合わせが増加傾向にあるため、システム内の「FAQ」機能や「チャットボット」機能などの整備も併せて推進し、照会や対応時間の削減を図っていきたいと考えています。
人事ビジョンの実現に向けた人事KPIの可視化については、経営会議での活用や、各種担当者が知りたい情報を自ら取りに行けるよう、人的資本情報、開示関連情報を公開できるようにしていきたいです。近年、情報開示についての感度や社会的な注目度が高まっているため、弊行としてもどのような目標を設定しているのかをはっきりさせること、その中でどの項目を重視するか、独自指数をわかりやすく明確にしようと考えています。
蓄積したデータを活用した最適配置については、システム内に蓄積したスキル、経験、キャリア思考、適性などと経営戦略に合致した人員配置を実施したいと考えています。システム内に過去・現在・未来の人事施策のポイントとなるデータが蓄積されていき、1つのシステムで把握できる状況を作っていくことも併せて重要なことだと考えており、組織力の向上と「ユニークバンク」の実現を目指し、今後も取り組んでいきたいです。
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